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輸入手続

軽減税率で「一体貨物」を輸入するときに知っておくべきは

前回の投稿「消費税を軽減税率で輸入するときに知っておくべきことは」において、「一体貨物」の定義を、

「輸入時に、飲食料品と飲食料品以外の貨物が一体となっている貨物であって、輸入申告書上、一つの欄に区分されるもの」

としています。

(本サイトでは、なるべく平易な文章で、判りやすい解説を目指していますので、必ずしも正確な文章でない場合があります。正確な表現や定義は、税関ホームページ等をご参照くださるようお願いいたします。)

前回の繰り返しになりますが、「一体貨物」について軽減税率を適用するためには、次の二つの条件を同時にクリアしなければなりません。

  • その貨物1個の消費税の課税価格が1万円以下であり、かつ、
  • その貨物に含まれる飲食料品に該当する部分の価額が、全体の価額の2/3以上であるもの

従って、特に注意するべきは、仮に関税分類上は飲み物や食品に分類された品物であっても、厳密に上の条件をクリアしなければ標準税率(10%)が適用される場合があるということです。

plus-1

上の例は、高級ウーロン茶で、商品1個(1壺、1包装)当たりのCIF価格とその関税額を合計した単価が1万円を超えています。ですが、少し高価な「飲食料品」として軽減税率(8%)が適用できると考えて、軽減税率で輸入申告しました。

ところが、税関検査の対象となり、内容を確認したところ、当該ウーロン茶「専用の計量スプーン」が同梱されていることが分かりました。

当該スプーンは、ウーロン茶とは別の品物なので、関税分類上、セットとして分類して良いかどうかを、「関税率表の解釈に関する通則」(いわゆる「分類の通則」)に基づいて判断することになります。

この事例の場合は、同梱されていたスプーンが当該ウーロン茶専用の性状のものであったとすれば、おそらく、同通則3(b)により、「小売用のセットにした物品であって、品物全体に重要な特性を与えているもの(構成要素)は「ウーロン茶」であるとして、ウーロン茶の税番に分類されることになるでしょう。つまり、関税分類上は、いわゆる「飲食料品」ですね。

でも、ここで問題が生じます。消費税法上は、「飲食料品」と「その他のもの」が一体となった商品であるので、「一体貨物」となります。そこで、先ほどの定義に照らせば、「一個の課税価格が1万円を超える」ことから、残念ながら消費税は標準税率(10%)が適用されることになるのです。

plus-2

もう一つの例は、岩塩の入った金属のボトルで、当該ボトル自体が、岩塩を細かく砕くためのミルになっていて、そのまま食卓に置いたり、料理に使用できるという商品です。

前回の説明でも、通常使用される容器は、軽減税率の対象になると定義されていますが、今回の「ミル付き容器に入った岩塩」は、この定義から外れることになります。

また、関税分類上も、通常の容器であれば「岩塩」に含まれるのですが、この商品の場合は、「ミル付き容器」と「岩塩」が一体となった商品となります。つまり、先の高級ウーロン茶同様に、関税分類上は、「分類の通則」3(b)により、「小売用のセットにした物品であって、品物全体に重要な特性を与えているものは「岩塩」であるとして、「岩塩」(飲食料品)に分類されるものと思われます。

よって、この場合、「一体貨物」に対して軽減税率を適用するための二つの条件をクリアする必要がありますが、「岩塩」の価格とミルの価格の割合が5:5で、「岩塩」の価格の割合が全体の2/3を下回ることが判明したということで、やはり、残念ながら消費税は標準税率(10%)が適用されることになります。

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Table Pixabay

前回も少し触れましたが、前者の例では、税関検査で「専用の計量スプーン」が入っていることが判明したので、加算税の対象になる可能性が高いと思われます。

また、場合によって、当該ウーロン茶と計量スプーンを別欄に分けられれば、ウーロン茶は軽減税率を適用し、スプーンは別欄で申告して標準税率を適用するということが可能かもしれません。

しかし、本来、既に審査に入っている輸入申告書のそうした補正や撤回が税関に認められるかどうか微妙なところだと思いますし、認められたとしても、お茶とスプーンや容器等の個々の合理的な価格を算出し、運賃と保険料を按分し、場合によっては、全てのウーロン茶に同じスプーンが入っているのかなどの疎明が必要になるかもしれません。そうすると余計な手間や日数、費用が掛かることになりかねません。

 消費税の税率は、関税分類とはひとまず切り離して考える必要があると言うこと、特に「一体貨物」(になりそうな商品)については、個々の商品の輸入時の内容や価格等を十分に把握しておくことをお勧めします。

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