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輸出手続

日韓関係に絡む輸出(外為法)規制をおさらいしておこう

韓国大法院の元徴用工訴訟判決から約1年、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄までほぼ3週間という時点で、韓国へ輸出される貨物の今の輸出規制内容をおさらいしておきましょう。

何せ、分類すれば両国は同盟国であるし、米国の思惑も重なって、急転直下がありそうな気もします。それでも、今の規制の理由とその中身が正しく理解されていないと、これから一部でも急に緩和された場合に、その効果や影響を見誤りかねません。

まず、7/4から個別許可の対象となった3品目は以下のとおりです。

three items

では、そもそも個別許可とはどういう意味でしょうか。

輸出企業の皆さんはお分かりだと思いますが、外為法を受けた輸出貿易管理令の別表1に記載された安全保障上の輸出規制品目については、原則として、輸出の前に経済産業大臣(以下「経産省」と略します。)の許可を受けて、その許可証を税関に提示しなければ輸出できないルールになっています。

個別許可とは、その許可を輸出案件毎に申請するものですが、例えば、当該貨物の機微度が比較的低い品目について、輸出管理体制の整備等の条件のもとに、包括的な許可証を入手して輸出することができます。

つまり、7/4以前は、韓国向けの上記3品目は「包括的」に許可されていたというだけです。現在、これらの輸出案件については個々に経済産業省の審査を経て、許可されて後に輸出されるので、まず、日本からの供給が全く停止している訳ではありません。また、特に厳しい審査基準が設けられたわけでもないようですから、例えば、中国や台湾向けの輸出と同じ列に並ぶことになっただけ、と言えます。

Ijmaki, Pixabay

個別許可になる前は包括許可であったので、米国や欧州向けの列に並んでいれば良かった訳ですね。包括許可は、ある期間の同じ案件について「あらかじめ」審査を受けて許可をもらうことと同義だとすると、今回の品目の韓国向け輸出に関しては、日本政府として包括的な審査では適切な輸出(安全保障)管理が難しいと判断されたということになります。

つまり、経産省がどの点を個別に見なければいけないと判断したのか、という点をこそ私たちは考えなければならいように思います。少なくとも、日本の経産省はその点の明確な理由をお持ちの筈です。

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Tug of War Skeexe, Pixabay

ヒントの一つは、その次の規制強化にも見られます。ご承知のとおり、今年8/7、経産省は韓国を当時の「ホワイト国」から除外する(実施日は、8/28)と公表しました。そもそも、「ホワイト国」とは、大量破壊兵器等の製造、材料、技術に関する 4つ(核兵器、生物兵器、化学兵器、ミサイル)の国際的な輸出管理レジームの全てに参加している国で、日本が、政府として、相手国を「安全保障上問題がないと判断した国々」のことです。今は、呼び名が変わって「グループA」とされており、韓国は、このグループから除外されて、現在「グループB」に属します。

four group

ただし、ここで間違えてはいけないのは、韓国がグループ Bになっても、韓国向けの輸出には、特別一般包括許可 (グループA以外の国向けの包括許可)制度が利用可能だということです。そして、この「特別一般包括許可」制度は、通関現場において、“一般包括許可よりも、むしろ一般的”と言われるほどノーマルな制度だと言うことです。

rule

 通常の輸出に用いられる 「一般包括許可」と「特別一般包括許可」の概要は、次表のとおりですが、日本の安全保障システムでは、元々、輸出者自身がきちんと社内管理体制等を整えて輸出管理することが前提になっているので、特に、恒常的に輸出を行う輸出者(メーカー)の多くは、安全保障貿易に関する社内体制を整備して、法令遵守規則(CP)もきちんと備えている場合が多いのではないでしょうか。

houkatsu

そうであれば、既に「特別一般包括許可」を取得している輸出者にとってそれほど大きな影響はないように思えます。

ただし、グループAか否かで、キャッチオール規制制度や少額特例の制度等については、若干の違いが生じることになるので、その点は注意が必要だと思います。

例えば、現在、韓国向けの輸出を行おうとすると、キャッチオール規制のもと、リスト規制非該当の貨物であっても、大量破壊兵器の開発等に用いられる恐れがないか常に確認する義務が生じます。

また、同様に、少額特例(貨物の種類によって一定の金額以下であれば、輸出許可が不要とされる制度)の範囲内であっても、核兵器等の開発等に用いられる恐れがあるとか、インフォームを受けた等の場合は許可を要するので注意が必要です。

catch all

こうなると、例え輸出管理体制やCPをしっかり整えていたとしても、韓国がグループBに該当することになったためにキャッチオール規制への対応や包括許可の条件の変更等に伴って、現行の輸出契約書の見直し(例えば、政府の許可を輸出契約成立の条件に加えることなど)や、CPの修正等を行った輸出者さんは多いだろうと思われます。

また、その他にも、特別一般包括許可の下で「ストック販売」を行う場合、韓国がグループAである間は、需要者に関して安全保障上のリスクを確認する必要はありませんでしたが、グループBになると、その義務が生じますし、仲介貿易についても、規制が厳格化しますので、そうしたことに十分対処した体制作りを急いだ日本企業もあっただろうと思います。

日韓の問題を取り上げるときに正面に出てくるのは、冒頭に申し上げた「韓国大法院の元徴用工訴訟判決」の話題です。勿論、この問題が重要な国際問題を孕んでいることは理解できます。

bird-Amy_S-Pixabay
bird, Amy_S, Pixabay

しかし、こうして韓国向け輸出規制を素直に見ると、日本の安全保障上の問題、或いは、国際的な大量破壊兵器等の管理レジーム上の問題がクリアされていないと我が国が判断したから規制が強化されたのであって、では、

「例えば、韓国に輸出された日本の先端素材や高機能製品が、そういう規制が十分でない他国に再輸出されているのではないか、そういう事実がないならないと、きちんと主張すれば良い訳だし、或いは、世界の安全保障体制に沿った状態であると具体的に証明してもらって、それをどう評価するか」、といった観点での議論が欠けているように思えます。

規制が強化された当時、新聞やテレビ報道などを見ていると、韓国向けの輸出が大幅に規制強化されたというトーンの主張がよく見受けられました。

そして今、最初に申し上げたように日韓の状況に米国からのアドバイス等もあって、変化の兆しが生じてきています。

containers
containers, belgium, Pixabay

これからも、輸出業務に関与する皆さんであれば、その規制緩和等の内容をきちんと把握して、仮にテレビ報道内容等に多少の誤りや偏向が含まれていたとしても、社内の輸出契約内容等に鑑みて、冷静に、かつ迅速に対処する必要があるように思います。

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