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野生の動物や植物の国際取引にはルールがある

6月12日付日本経済新聞の社会面に、2007年~2018年の12年間に日本の水際で密輸入を阻止された動物は、78件、1,161匹に及んだとする、TRAFFIC JAPANの公表内容が掲載されました。

空港などの税関で止まった動物は、フクロウやカメなど、日本の愛好家の間で人気の「エキゾチック・ペット」が主体だとあり、中にはコウモリやサルなど、人間に病原体を媒介する動物も含まれていたと、記事にあります。

今回は、この野生動物等の密輸について、少し堀り下げてみたいと思います。

野生動植物の国際取引はワシントン条約で規制される

以前にも言及していますが、税関の密輸摘発報道は、税関ホームページから確認できます。野生動物の密輸入摘発事例としては、2019年公表の摘発事例(→こちら)がわかりやすいと思います。これを見ると、以下のように、動物の種類は多種多様です。

  • ガラゴ科ショウガラゴ属のサル、
  • コモンマーモセット
  • アカテタマリン
  • ケヅメリクガメ
  • タケネズミ
  • アフリカヤマネ
  • フトアゴヒゲトカゲ
  • 種類不明のトカゲ
  • 種類不明のヘビ
  • スンダスローロリス
  • ピグミーマーモセット
  • コツメカワウソ
CITES-FAUNA

これらの動物の殆どが「ワシントン条約」で国際取引が規制されている種(species)になります。

このワシントン条約は、正式には、「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(CITES:Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)と言いますが、貿易を行う方であれば理解必須の条約ですね。

本来、条約そのものがCITES(サイテス)ですが、この条約で定める輸出許可書なども、「ワシントン条約で定める輸出許可書等」は長くて言い難いので、一般に「サイテス」と呼ばれる場合があります。

ちなみに、パンダの絵と共に知られるWWFという野生動植物の保護などを目的とした国際団体があります。こちらは、元々、World Wildlife Fund(世界野生生物基金)と言い、野生動植物の保護を目的としていましたが、最近は少し間口を広げ、World Wide Fund of Nature(世界自然保護基金)と改称しています。日本にもWWF JAPAN(→こちら)という組織があります。

最初に新聞記事の元となったTRAFFIC(JAPAN)は、このWWF(JAPAN)の下にあって、野生動植物の不正取引を監視する“実働部隊”の様な存在だと、私は理解しています。

附属書Ⅰは絶滅の恐れが迫っている種。

さて、ワシントン条約をごく簡単に解説しますと、この条約は、野生動植物の種類ごとに、“絶滅の恐れの度合い”によって、附属書のⅠからⅢに分類しています。ここからは、説明を分かりやすくするために、動物に限定してお話しします。

附属書Ⅰに分類される動物としては、主なものとして、

  • ゾウ
  • サイ
  • トラ
  • ヒョウ
  • ツキノワグマ
  • ライオンタマリン
  • ゴリラ
  • チンパンジー
  • ナガスクジラ
  • ウミガメ
  • オオサンショウオ
  • アジアアロワナ

などがあります。(ここには、かなりラフに掲名してあるので、厳密には、ワシントン条約の最新の附属書(→こちら)をご参照下さい。以下同じ。)

附属書Ⅰの動物は原則として国際取引が認められず、学術研究等の目的の場合に限定されています。輸出国と輸入国の両方の事前の許可が必要になります。勿論、この附属書Ⅰの動物の輸出許可書は簡単に入手できるものではありません。

一方で、附属書Ⅰの動物は絶滅の恐れが高い、ということは希少性が高い、ということで、それだけマニアにとって所有者は羨望の的で、悪徳業者にとっては“商品価値”も高い、ということになります。

そして、もっと悪いことに、ゾウは象牙にも、サイは犀角にも、トラは虎骨にも、クマは熊胆にも高い需要があるので、生きていなくとも良い、ということになります。余計に始末が悪い、ですね。

animal-Pexels, Pixabay
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附属書Ⅱの種は、広い範囲に亘る。

附属書Ⅱに分類される動物の例としては、

  • ジャコウジカ全種
  • オオカミ
  • ネコ科全種
  • カワウソ亜科全種
  • クマ科全種
  • クジラ目全種
  • オオコウモリ属全種
  • サル目全種
  • タカ目全種
  • ツル科全種
  • フウチョウ科全種
  • オウム目全種
  • フクロウ目全種
  • ワニ目全種
  • カメレオン属全種
  • イグアナ目全種
  • ボア科全種
  • ニシキヘビ科全種
  • リクガメ科全種
  • タツノオトシゴ属全種
  • シャコガイ科全種
  • 石サンゴ属全種

などがあります。かなり広い範囲に及ぶことがお分かりになると思います。

附属書Ⅱに掲名されている動物を輸出入する際は、輸出国の管理当局が発行した輸出許可書(CITES)を、輸入の際、税関に提示する必要があります。こちらは、国によって取得の難易度が異なるようです。

一見してお分かりのように、かなり広めに指定されていますので、外国から動物を輸入する場合は、この範囲に入っているかどうかの十分な検討が必要です。

また、先にもふれましたが、附属書ⅠもⅡも同様に、ワシントン条約の規制対象は、生きている動物に限りません。

剥製や毛皮は勿論、角や牙、皮等の個体の一部、バッグや靴、衣服、ショールやコート、楽器、家具などの製品や半製品も規制対象に含まれる場合があります。こうした場合、その品物に係る輸出許可書等がなければ輸入はできません。

ara-Susanne Jutzeler,suju-foto, Pixabay
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附属書Ⅲは、特定の国が指定した種が掲げられる。

附属書Ⅲには、

  • インドのマングース(一部)
  • カナダのセイウチ
  • アメリカのカミツキガメ、ワニガメ
  • 中国のアカサンゴ、モモイロサンゴ

などがあります。

これらの種は、個別の種類を掲げた国以外の国の個体は規制対象外となります。

なので、例えば、メキシコのカミツキガメを輸入したい場合は、メキシコの原産地証明書があれば輸入できる、ということになります。

以上、ごく簡単にワシントン条約で規制される動物を見てきましたが、勿論、輸出も同様に規制されていますので、日本のワシントン条約管理当局である経済産業省でCITES(輸出承認証)を入手して輸出通関に及ぶ必要があります。

漢方薬や化粧品もワシントン条約の規制対象になる。

念押しになりますが、ワシントン条約はどんなに形が変わっても規制対象から除かれない場合があり、特に「漢方薬」と「化粧品」には注意が必要です。

漢方薬には、犀角、虎骨、熊胆、麝香などが含まれていることが多く、原料としてそのうち1つでも包装に表示されているものは、CITESがなければ輸入できず、到着地の空港税関で所有権を放棄するということになります。

勿論、悪質な場合な犯則事案として処分されます。

最後にもう一つ。生きた希少野生動物を密輸する人間は、当該の動物にとって大変劣悪な状況で運搬してくるので、日本に到着した時点でその動物が死んでしまっているケースが後を絶ちません。

日本国内で 希少動物を購入するとき、その動物をペットとして飼うと決めるときに、その可憐な瞳の中の悲しみに思いを馳せつつ、少なくとも、その動物が、きちんと手続を踏んで輸入されたものか、或いは、日本で繁殖させたものか、などを確認してください。

その確認ができない場合は、そういった非情な人間に密猟され、親を殺され、檻に入れられ、ブラックマーケットで売られ、鞄の底に押し込められて、恐怖のあまり死んでしまった仲間とともに密輸された動物である可能性が高い、ということになります。

gorilla- 272447, Pixabay
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