ESGとは。
ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を並べた、一種の頭字語ですね。
このところ、投資環境の話題として新聞などで目にする機会が増えています。一種の企業価値を測る基準のようです。
ESGは、個別企業の、その時々の利益などの業績評価とは違った観点で、非財務情報を含めた事業内容や将来性を総合評価することによって、その企業の成長の持続性、安定性を測る指標と理解できます。そのため、特に長期視点を重視するGPIF(Government Pension Investment Fund 年金積立金管理運用独立行政法人)等の超大手機関投資家(ユニバーサル・オーナ)に用いられています。
GPIFが重視するESG
ちなみに、GPIFのホームページ(→ こちら)によると、ESGに関する要素の例として、
- 「E:環境」は、気候変動、水資源、生物多様性など、
- 「S:社会」は、ダイバーシティの推進、サプライチェーンなど
- 「G:企業統治」は、取締役会の構成、少数株主保護など
が、掲げられています。
他にも、世界銀行のサイト(→ こちら)など、様々な情報を総合的に読み解くと、
E(環境)は、地球温暖化対策、環境破壊物質のコントロール、森林や希少野生生物の保護などが含まれます。これは、輸出入手続きでいえば、まさに、オゾン層破壊物質を規制するモントリオール議定書に基づく手続きであり、有害廃棄物の国際移動を規制するバーゼル条約に基づく手続き、絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引を規制するワシントン条約に係る手続き等を適切に行うこと、が該当すると思います。
S(社会)は、昨今注目を浴びている働き方改革の実現をはじめ、国家レベルの貧困の克服や公平性の追求、人口減少への取り組みなどが含まれます。こうした要素が輸出入規制に直接関連する規制等は見当たりませんが、見方を変えれば、例えば、テロの防止、麻薬や武器の密輸入による社会の不安定化を防ぐ取組み、などは、考え方として近くないでしょうか。
G(企業統治)については、環境問題への具体的な取組みや社会の安定、平等に現実的に寄与する企業の組織的な対応が問われているものと思います。地球規模の環境問題への対応、組織内、或いは企業活動上のステークホルダー全体における公平性の実現といった、一般的な収益に直接貢献しない分野でも企業を正しく導きつつ、企業そのものの持続性、安定性を高めるためのリーダーシップが求められます。
こうした取組みを明確に、力強く体現できる企業が、安定的な成長を求める投資家の皆さんの目に好ましく映るのではないでしょうか。
AEOの基本はコンプライアンスとセキュリティ
AEO認定事業者(特定輸出者、特例輸入者、認定通関業者、特定保税承認者など)制度は、適正な輸出入手続きの実施を担保する法令遵守規則(Compliance Program)を策定し、これを確実に実行しつつ、自己の取組みを見直し、改善する企業、社会に必要とされる企業として認定する制度です。
また、AEO認定企業のそうした取組み自体は、そのサプライチェーン全体の安全と安定に貢献します。テロ組織や密輸組織に利用されない物流を実現します。役員から新入社員まで全ての従業者、協力企業や下請け企業の社員まで、必要な知識が行き渡った確固とした組織であることを証明できます。
だから、AEO制度の基本は、コンプライアンスとセキュリティなのです。
AEOは、ESGに直結する
AEO事業者として認定されれば、税関の通関審査や貨物検査を簡便にするとか、輸入時の納税のタイミングを輸入後にまとめることができる、申告税関を自由に選べるなどのアドバンテージが与えられる制度です。
しかし、本来、AEO制度は、輸出入手続きに関する適正性を企業自身が担保することで、物流の適正性のみならず迅速性も確保するスキームです。
現在の国際的物流において重要視されている要素が、まさにSDGsを含めた環境維持であり、テロ対策や麻薬取引対策を含めた安全安心な国際社会の実現であり、GVC(Global Value Chain )を構成する全ての企業の健全性だと思います。
つまり、AEOはESGに直結していると考えています。
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