トイレットペーパーは中国から輸入もされているが。
今、街中のスーパーマーケットではトイレットペーパーが品薄になっているようです。でも、これはあくまで店頭での状況で、報道されている様に、日本のトイレットペーパーの在庫が品薄になっている訳ではありません。もとは、かつてのオイルショックの時もそうでしたが、根も葉もない、悪質なデマによるものです。
だから輸入実績を調べてみました。トイレットペーパーの輸入統計品目表(HS関税率表)番号は、4818.10.000です。この番号さえ分かれば、誰でも、税関ホームページの財務省貿易統計検索サイト(→ こちら)から、輸出入実績を知ることができます。
ちなみに、2019年1年間のトイレットペーパーの輸入実績は、約24,944トンでした。これが家庭用ロールに直すと何個になるのか、どなたか計算してみていただきたいと思いますが、とりあえず輸出国ごとの割合をグラフにしてみました。
このとおり、第1位は中国で約14,388トン(57.7%)、第2位はベトナム約6,060トン(24.3%)、以下、インドネシア、韓国と続き、意外にも米国が第5位で、約48トンが輸入されています。まず、トイレットペーパーの中国からの輸入が少しはある、ということが分かります。
トイレットペーパーは日本で沢山生産されています。
では、全国でトイレットペーパーがどのくらい製造されているか。こちらは経済産業省生産動態統計2019年年計〔パルプ・紙・紙加工品〕(→ こちら)で拾いました。すると、トイレットペーパーの日本全体の生産数量は1,058,422トンでした。
つまり、2019年の国内製品と輸入された製品が全て消費されたと仮定すると、日本のトイレットペーパーの輸入数量は、日本全体の消費量の約2.3%、そのうち中国から輸入されている量はわずか1.33%ということになります。
だから、皆さん、トイレットペーパーを全く買い置く必要はありません。つまらないデマに踊らされるのはもっとつまらない。むしろ、こんなデマの発信源は法で取り締まって欲しいような気がします。
原料も調べてみました。
ちなみに、では、国内で生産されるトイレットペーパーの原料に着目するとどうなるのか。多分、原料は、全国から集められた古紙や間伐材等が利用されていると思いますが、外国からは、製紙原料となるパルプや木材チップも輸入されています。トイレットペーパーの生産量が気になるなら、その原料の入手先も調べないといけません。
トイレットペーパーの原材料の知識が十分ではないので、とりあえず、製紙用パルプ(概況品番号2090103)と木材チップで調べてみます。
概況品番号というのは、HS番号単位だと、細か過ぎるとか、複数のHS番号に分散していて分かり難いので、一般的な商品等の単位でまとめたグループをコード化して、貿易統計を調べやすくしたものです。
概況品としての製紙用パルプのHS番号は、〔4701、4703~4705、4706.20~4706.93〕になります。この製紙用パルプは、2019年に約1,595,041トン輸入されており、その輸出国ごとの割合は以下のとおりでした。
第1位はカナダで約425,362トン(26.7%)、第2位は米国約414,710トン(26.0%)、以下、ブラジル、チリ、ニュージーランドと続きます。これらは、勿論、トイレットペーパー以外の紙製品の原料にもなるのでしょう。
オーストラリアの森林火災の方が心配に。
次に、木材チップの輸入ですが、こちらは針葉樹のチップ(HS:4401.21-000)と針葉樹以外のチップ(HS:4401.22-000)に分かれます。
針葉樹のチップは、2019年に約1,486,026トン輸入されており、その輸出国ごとの割合は以下のとおりでした。
第1位は米国で約687,622トン(46.3%)、第2位はオーストラリアで約503,866トン(33.9%)、以下、フィジー、ニュージーランド、ロシアと続きます。
針葉樹以外の木材のチップは、2019年に約10,684,574トン輸入されており、その輸出国ごとの割合は以下のとおりでした。まず、この輸入量が一桁違うことに驚かされます。
第1位は、意外にもベトナムで、約3,655,308トン(34.2%)、第2位はオーストラリアで約1,926,236トン(18.0%)、以下、チリ、南アフリカ、タイと続きます。こうなると、新型コロナウィルスよりも、オーストラリアの森林火災の方を心配してしまいます。
トイレットペーパーは輸出もされています。
最後に、おまけ。実は、日本はトイレットペーパーを他国に輸出しています。ご存知でしたか? 2019年の輸出量は約1,069トンでした。やっぱり、数字としては少ないですね。
輸出先は、第1位が台湾で約724トン(67.7%)、第2位は中国で約223トン(20.9%)、以下、ロシア、ペルー、モンゴルと続きます。
両方に中国が出てくると言うことは、多分、輸入されるものと輸出されるものの品質などが違うのでしょう。金額を数量で除した価格(単価)を求めると、中国から輸入しているトイレットペーパーは約¥166千円/トン、中国に輸出しているトイレットペーパーは、約283千円/トンでした。
貿易統計は面白い。
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