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AEO認定事業者

税関の検査を回避する方策はあるか

今年、5月19日から21日までの3日間、広島でG7サミットが開催されます。(⇒G7広島サミット公式ホームページ

サミットが開催されるときは、その前(2016年)の伊勢志摩サミットの時も同じでしたが、日本各地で関係閣僚会議が開催されます。今回は、札幌、軽井沢、倉敷、宮崎、高崎、新潟、仙台、金沢、長崎、伊勢志摩、日光、京都、高松、堺、水戸で、15の閣僚会合が開催されますので、全国の警察などが、そのための警備を強化することとなります。

全国の税関も、このサミットの開催に合わせて、輸入貨物の検査体制を強化することとしており(⇒税関の水際対策の強化に関するアナウンス)、皆さんの中でも既に検査が増加したという方がいるのではないでしょうか。

「今まで検査されたことはなかったのに検査された。」とか、

「通関の費用が想定より大幅に増えてしまった。」とか、

「予想してなかったので引取りに思わぬ時間を要した。」などの声が聞こえてきそうです。

では、税関の検査を回避する方策はあるのでしょうか。その辺りを、今回は、少し考えてみようと思います。

どのくらいの確率で検査になるか

まず、そもそも、どのくらいの確率で「税関検査」の対象になっているのでしょうか。

現在、殆ど全ての輸出入申告は、一次的にNACCSシステムを用いて審査されています。

その中で、「現品検査扱い(区分3)」になる確率は、実はさほど高くはありません。

どうしてか。

そもそも、日本に輸入される貨物の大半は、通関業者に通関手続を委託したものであり、税額の計算や他法令の該否等において事前にきちんとした処理が期待できるので、問題ないものが多いだろうから、と考えられます。

他の貨物の一部は、「書類審査扱い(区分2)」になります。この区分は、システム等を通じて提出した書類を税関職員が審査し、問題がないと判断して審査終了の処理をするまで輸出入が許可されないものです。

通関に多少の時間を要するでしょうが、それでも、検査になるより余程早く、輸入貨物の引取りや輸出貨物の船(機)積みが可能でしょう。

そして、かなり多くの申告は、「即許可扱い(区分1)」になっていると思います。

この区分は、原則として、システムの中だけで審査が終了するものです。

この場合、輸出貨物の場合は申告と同時に輸出許可になり、輸入貨物でも、納税手続きが済んでいれば、申告とほぼ同時に輸入許可になります。

検査になる確率は、皆同じ、ではない。

ただし、検査になる確率は、誰でも、どの貨物でも、いつでも同じだという訳ではありません。

その申告された貨物が、その時、「どの様な貨物か」によって、その割合は異なります。

その税関検査になる理由を、以下考えてみましょう。

また、では、どうすれば「区分3」になる確率を低くできるかも考えてみたいと思います。

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貨物に隠されている覚醒罪や麻薬等の発見、摘発

まず、税関が検査する理由では、輸入貨物に覚醒剤等の不正薬物が隠されている可能性が高いと判断したから、が最初に来るのではないでしょうか。

覚醒剤や大麻、麻薬(コカインなど)、ケタミンなどが、全国の税関で頻繁に摘発されています。(⇒ 令和5年における各税関の事件発表

そうした過去の密輸事例や密輸の傾向、税関に寄せられた情報の内容などを検討して、その(商業)貨物が疑わしいと判断すれば、税関は検査を行うでしょう。

そうであるならば、現物を確認せずとも、これらの疑念、不審、疑問等を払拭するような申告内容であれば、税関検査はない、かもしれません。

例えば、新規の輸入者や実績が少ない輸入者の場合は、インボイス等の通関書類以外に、輸入者に関する正確な情報(資料)が提供されているとか、配送先に関する正確な情報(資料)が提供されている場合などが考えられます。

知的財産侵害物品(偽ブランド品等)の発見

次に、商標権や著作権、意匠権などを侵害する物品(偽ブランド品、コピー商品、模倣品など)であることを疑わせる場合も、税関は検査する必要があるでしょう。

例えば、2022年の1年間に、知的財産を侵害する物品の輸入を税関が差し止めた実績は、件数で約27,000件、点数で88万点を超える数にのぼっています。(⇒ 令和4年の税関における知的財産侵害物品の差止状況

輸入しようとする貨物が侵害品でないことを示すには、事前に商品のカタログや写真を提出しておくとか、商標等の説明資料を添付する、或いは、正規の権利者等の同意書を添付しておくなどの対策が考えられます。

勿論、侵害品であるのに侵害品でないかのように装った場合は、「輸入してはならない貨物」を輸入しようとした(その)行為が、相当に悪質ということで、より重い処分になるでしょう。

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品目分類や申告税率についての疑義の解明

輸入申告された貨物の品目分類に疑義がある場合というのは、よくあるケースです。

新商品などについて、経験豊富な通関士であっても分類番号には悩むことがありますが、そうした貨物であれば、税関職員だって悩むものです。

そうした場合、実際に貨物を見て、必要であればサンプルを採取して、更に必要であれば、税関の分析部門で成分等を分析した上で、時間をかけてその性状や用途、製造工程等を検討して、漸く分類(税率)が決定するという場合もあります。

税関が検査をしなくても分類を判断できるようにするためには、例えば、新商品や分類が難しそうな貨物の場合は、その商品の分類作業の参考となるような情報、特にその材質、構成、用途等に関する十分で正確な情報を税関に提供しておくなどの対策が有効ではないかと思います。

事前に関税鑑査官に照会しておいて、分類のポイントとなる箇所を教えてもらい、貨物が到着したら、保税地域の中で内容点検等で確認しておき、その結果を報告書として添付することも有効でしょう。

食品衛生法、薬機法、外為法、道路運送車両法等の他法令上の適否の確認

他法令に該当するか否かという点も、その処理を間違った場合は国民の安全、安心の大きな問題に直結するので、税関は慎重に対応することとなります。

輸入貨物の場合は、特に、食品衛生法や薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に該当するか否か、ワシントン条約で規制される野生動植物の製品ではないか、などの点で判断が難しい場合があります。

輸出貨物であれば、輸出貿易管理令(外為法)別表1(武器や大量破壊兵器、その部品、素材等の輸出規制)に該当するか否か、バーゼル法等で規制される有害廃棄物やゴミではないか、盗難自動車やその部品ではないか、といった観点での現物確認が多いように思います。

そうした場合は、あらかじめ所管官庁への照会しておいて、その結果を申告時に添付するとか、該当が疑われやすい法令に関する分析結果や検査結果等を示す資料を添付するなどの方策が考えられます。

輸出貨物のバーゼル法に関しては、貨物や積付け状況の写真を用意するとともに、事前に環境事務所の確認を取っておく、残存油がないことなど必要な確認をきちんと行った旨の書面の提出などの対策も有効でしょう。

盗難車でないことについては、積付け状況の写真のほか、車体番号等の情報をはじめ、当該自動車やパーツの入手先、購入方法等を証明する書面などが有効かもしれません。

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原産地の確認、原産地表示の適否の確認

原産地の問題といえば、EPAの適用等のための原産地証明書等の有効性などの問題を想起する方が多いでしょう。

でも、その場合は、むしろ、原材料の仕入れ先や製造工程、経由地などが問題になるのであって、現物確認を必要とするケースは少ないと思います。

原産地に関して貨物確認を要する場合の多くは、その原産地表示が正しいか、誤解を招くようなものでないか、という疑問が生じたときです。

関税法第71条には、次の様に規定されています。(⇒ 関税法

「原産地について直接若しくは間接に偽った表示又は誤認を生じさせる表示がされている外国貨物については、輸入を許可しない。」

また、その判断の多くは関税法基本通達によりますが、どういう表示が良いのか、良くないのかは、結構微妙な書きぶりになっています。(⇒ 関税法基本通達71-3-1~71-3-7

この場合も、やはり、写真、カタログ、内容点検の結果等を通関書類に添付しておくことが有効だと思います。

そもそも、そういう疑念を持たれないようにすることが重要ですが、「誤解を招くかもしれない表示」があると思った場合は、「正しい原産地」を、「正しい方法」で表示しおくことも良いかもしれません。

まあ、その場合に、あえて税関にその状況(取扱いの結果)を情報提供するかどうかは、その時の輸入者や通関業者の判断ですが。

違約品の戻し税、減免税手続き等に基づく確認

関税や消費税が減免税の対象となる輸入貨物については、その減免税要件に該当するかという点に関して、現物の性質・形状等を確認するため、検査になる場合が多いでしょう。

また、輸出貨物で、違約品(契約と異なる商品であったことを輸入後に確認したため、クレームとなり、返送等するもの)を戻す場合とか、再輸入減免税の対象となる貨物などの場合も検査になる確率は高いように思います。

この場合は、その減免税制度と制度ごとに決められた手続きに応じて、契約書など必要な書類をきちんと用意しておく、写真やサンプルを提供するなどの対策を講じることで、検査は省略されるかもしれません。

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テロ対策など集中取締り

最後に、G7サミットなどの重要な国際会議や、オリンピックなどの大規模イベントが開催される場合のテロ対策や、年末特別警戒など集中取締りとして行われる検査強化について、考えてみます。

これらを最後に持ってきたのは、なかなか、この視点での「検査に当たる確率」を下げる方策が見つけ難いからです。

警察や海上保安庁などの公安機関も同様かと思いますが、税関が水際取締りを強化する目的で検査を増やす場合は、人員や検査機器を増やして、集中投入すると思います。そうすると、例えば、それまで30%であった検査率を50%に増やせるかもしれません。

或いは、特定の品物について、期間限定で、10%の検査率を100%まで増やすことも可能です。

そうした場合、輸入者が検査を免れようとしても、難しいというか、運まかせというか、対策を立てることは困難のように思います。検査になっても、なるべくスムースに終わるようにするしかないかと。

通関業者の力量にかかっている、かも

全般的に言えることですが、普段から、正しい書類が申告の際に税関に提出されること、同じ貨物、同じ輸出入者で、同じ様な誤謬が発生していない状況が続くことが、通関をスムースに終えるためには重要だと思います。

また、既に述べたことですが、輸出入申告書のHS番号や、適用税率等の判断が難しい商品の場合は、なるべく事前教示を受けておくことも有効な対策だと思います。

税関職員だって、無駄な検査はしたくないと思っている筈で、摘発等のための検査対象はできるだけ絞り込める方が良いのではないでしょうか。

これまで見てきたように、通関業者の皆さんは、顧客の貨物がなるべく検査されないようにすることが可能です。

税関検査は、たいていの場合予見が難しいこともあって、特に中小の輸入者、輸出者にとっては、大きな時間的、経済的負担が生じかねません。

予め、税関検査を減らす、或いは税関検査をなるべく簡単に済ませられる工夫ができるのなら、それをすることが通関業者の資質向上にもつながるのではないでしょうか。

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当ブログでは、過去に、輸入しようとした商品が、港で突然止められてしまったときの対処方法などを解説した記事もアップしています。(⇒「商品の輸入通関が突然止まったときに」)

思いもよらず税関検査になった場合を含め、何らかの要因で輸入貨物の通関がストップしてしまったときに、どうすればよいか等を説明したものですので、ご参照いただければ幸いです。

また、当ブログに関するご意見やご質問などがございましたら、当方の業務内容やプロフィールに一度目を通されて、どうぞ、電話やメールで、お気軽にお寄せください。(⇒ お問い合わせ

その他、輸出入を業とする企業や通関業者の皆さんで、輸出入に係るパフォーマンスの向上を図りたいのでアドバイスを受けたいとか、社員教育等への対応も可能です。詳細は、こちらをご覧ください。(⇒ 貿易・通関・保税に絡む問題を解決したい

(最終更新:2023年5月7日)

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