AEO( Authorized Economic Operator:認定事業者)制度とは、税関が通関行政を迅速かつ的確に行うために、利用者からみれば、輸出入通関手続きをできる限りストレスフリーに保つために、世界規模で考案されたシステムです。
日本でも、税関当局があらかじめ定めた基準に則って、輸出入者や通関業者等の申請に基づき、その資質等を審査して、大丈夫だと判断した場合にAEO事業者として認定しています。
また、AEO制度は、その形態によって、特定輸出者、特例輸入者、認定通関業者、特定保税承認者等の事業者毎の制度に分かれます。また、それぞれの事業者の事業内容に応じたベネフィットが用意されていますが、今回は、日本のAEO輸出者(特定輸出者)が中国へ貨物を輸出する場合に的を絞って、その概要を見てみましょう。
まず、税関ホームページ(URL→こちら)から、AEO輸出者のベネフィットを概観すると、以下のとおりです。
上の表のうち、「相互承認」とは、日本のAEO制度とよく似た制度がある外国との間で、そのAEO事業者として認定した輸出者等の資質が優良であることを、相互に認め合うことです。現状、日本が相互承認を結んだ相手国は、米国、EU、中国、韓国、台湾、豪州、シンガポール、香港、マレーシアなど11か国に及びます。
一例として、日本と中国のAEO相互承認については、2018年10月に合意され、2019年6月から実施されています。
税関のリーフレット(download URL→こちら)によれば、その効果は次のように要約できると思います。
- 日本のAEO輸出者の貨物は、中国で輸入される時に税関による審査・検査が軽減される
- 日本のAEO輸出者の貨物が、例え中国の税関で検査されることになったとしても、それは迅速に実施される
- 日本のAEO輸出者の貨物が、万一、中国でトラブった場合も日本の税関が間に入ってくれる
- 何らかの事情で中国の物流が混乱した場合も、日本のAEO輸出者の貨物は、ライフラインの復旧等の後、優先的に処理される
一方、先ほどの表の様に、AEO輸出者のベネフィットはいろいろありますが、この6つのベネフィットをひっくり返すと、全ての事柄について、一般の輸出者はちょっと不利になっている、ということが言えそうです。
つまり、AEO輸出者でない方にあっては、
- 輸出しようとする貨物を、一旦、港頭地区等の保税蔵置場等に搬入してからでないと輸出許可は得られません
- 輸出しようとする貨物を搬入した保税蔵置場を管轄する税関官署の窓口に申告しなければなりません
- 輸出許可後に船名や数量等が変更になった場合は、速やかに申告税関に訂正等の手続きをする必要があります
- 「通い容器」は再輸入する時に免税申告できますが、そのための手続きは結構煩雑ですね
- 輸出申告すると、思わぬ時に、税関による書類チェック(審査)や貨物の検査を受ける場合がありますが、それに合格しないと輸出の許可は得られません
- 他省庁の輸出手続は、税関への輸出申告に先立って正しく行う必要があります。きちんと内容を理解して早め早めに終えないと、予定どおりに輸出できなかったとか、買手に約束した船積みに間に合わなくなることも
従って、外国にモノを売らんとお考えの皆さんにあっては、できるだけAEO輸出者の資格を得た方が良いわけです。
税関ホームページ(URL→こちら)によると、全国の輸出者のうちAEO輸出者は、たったの236者(2019年9月18日現在)で、一覧表からは、我が国を代表する大手製造者や商社、外資系企業等の名が連なっていて、会社組織や資本金といった面でハードルが高い、という様に見えます。
私見ですが、私は必ずしもそうした大規模な組織(人員)や予算が必要という訳ではない様に思います。
AEO輸出者になるには、本来の経営(利潤の追求)を司るマネジメントとは別に、「AEO事業者としてのマネジメント」が的確に機能していることが重要ですが、むしろ、体が大きくて、体力もあって、世界を股にかけて活躍する組織であればあるほど、これが結構難しいのではないでしょうか。
そして、この「AEO事業者としてのマネジメント」のうち、部内教育と内部監査は、相応しい第三者に委ねることも可能です。
が、その辺りのことは、また、別稿に委ねることとします。
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