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AEO認定事業者

内部監査を企業の成長に活かしたいなら

先日、公益財団法人日本関税協会が主催する「AEO内部監査人研修(通関・物流事業者)」の講師を務めました。

200904 AEO内部監査人研修(名古屋
200904 AEO内部監査人研修(名古屋

AEOとは、本サイトでも様々なページでご紹介していますが、関税法に基づく「認定事業者(Authorized Economic Operator)制度」です。(→ 税関ホームページ、AEO制度

AEOは国際貿易における世界標準

この資格を有する輸出入者、通関業者、保税事業者等に共通して、輸出入通関に関する時間を短縮し、その手続き上の手間をかなり省くことができます。

いわゆる、不正薬物の密輸やテロ活動の防止という「貿易秩序の維持」と、正常なサプライチェーンの確保や「円滑な物流」を同時に達成する方策としては、「世界標準」と言えます。

このAEOの認可(承認)を税関から得るには、個々の企業自身が、「コンプライアンス」と「セキュリティ」というたった二つのエレメントを満たせば足ります。

ここで言う「コンプライアンス」とは、当該企業とその従業者全員が関税法等の法令を遵守し、適正な手続の実行を担保する企業統治のシステム(企業内部の管理体制)が十分に機能していることです。

また、「セキュリティ」とは、当該企業が取り扱う貨物に関する万全なセキュリティ・システム(貨物管理体制)であり、顧客や委託先企業を含む人的な管理体制であり、当然、情報セキュリティを含みます。

そして、AEO事業者に認可(承認)された後に、その地位を継続するためには、「コンプライアンス」と「セキュリティ」の両面で、その認可(承認)された時点の基準を満たし続ける必要があります。

そのための重要なツールが、教育であり、内部監査である、と思います。

内部監査は「転ばぬための杖」にほかならない

この「内部監査」を一言で表すなら「転ばぬ先の杖」です。軽くて丈夫であるのが良く、大変重要な役目を持っていながら、時として「煩わしい存在」であるが故に、転びそうになるまで「有難み」が分かりにくい存在でもあります。でも、AEO事業者に限らず、企業にとって、内部監査は「転ばぬための杖」であり、「大怪我しないための杖」でもあります。

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輸出入企業は、商品や資材、設備等をできるだけ多く輸出入し、或いは、輸出入した貨物を国内外で売却してどれだけ多くの利益を得るかが本業かもしれません。商機を重視した物流にとっては、通関手続を含む法規制は「ボトルネック」そのものに映ります。

でも、人が社会生活で様々な法律や倫理に従って生きなければならないように、企業も様々な法規制に反しないための自助努力が必要です。

つまり、自律のための企業統治の仕組みが極めて重要です。

その考えは、最近、世界で注目を集めているESG(環境 Environment、社会 Social 、企業統治 Governance)投資にも通じると思います。

(→ ESG(環境、社会、企業統治)に、AEO(認定事業者制度)が直結する

また、通関業者や保税業者は、輸出入貨物に関する適正な通関手続と、保税蔵置場での貨物管理といった、水際でのコンプライアンスとセキュリティを確保する上で、重要な実行部隊です。

AEOの最大のメリットは「大人の証」

AEOの最大のメリットは、法規制の束縛を他人(税関)に委ねる必要がなくなることだと思います。自らの努力で社会的責任を果たすことができることだと思います。

税関から手とり足とり指導されなくとも、通関の際にいちいち口を挟まれなくとも、自分で律しながら仕事ができる「大人の証」とも言えます。

その「大人の証」を維持するためには、勿論、自分で常に「そうあるべく努力する」必要があります。

「内部監査」は、人が、自分の行動を顧みて、長所・良いところは伸ばし、短所・悪いところは改める行為に似ています。

200904 AEO内部監査人研修b(名古屋
2020.9.4 AEO内部監査人研修(名古屋、通関・保税)

人は内省によって、自分の能力の変化を自覚し、社会での立ち位置を再確認し、成功体験を成長につなげ、反省点は繰り返さないよう気を付けることができます。企業も同様に、内部監査を真摯に実施することで、自社の行動を成長につなげることができます。

だから、怖いのは「内部監査」の形骸化

「内部監査」の重要性は、別に、AEO事業者に限ったことではありません。

しかし、怖いのは「内部監査」の形骸化です。それと、幹部社員による「内部監査」の軽視です。

内部監査の形骸化とは、多くの場合、

  • 監査項目が最新のCP(法令遵守規則)や手順書にマッチしていない
  • 業務実態を正確に捉える監査項目になっていない
  • 現場・現物の確認が不十分
  • 総括管理部門(司令塔)への監査不十分
  • 非行、非違の隠蔽に対する(自浄)機能不全の見落とし

などがあげられます。

内部監査が形骸化する大きな要因は、監査担当部門の能力(人員)不足や担当者の経験不足、部門連携の遅滞などによります。

「内部監査」の軽視は、勿論、企業の最上位者を含む幹部の無自覚が最大の要因ですが、同時に、監査担当部門の能力不足や弱体化などの大きな要因でもあります。

杖は転んでからすがっても役に立たない

先日、有名俳優が「大麻」を隠し持っていた科で警察に逮捕されました。また、今年になってからも、水際での覚醒剤やMDMA(麻薬)、大麻等の押収が継続しています。

万一の事態が生じた場合、例えば、あなたの会社が輸出入業者、通関業者又は保税業者のいずれかで、その従業員が、麻薬とかニセモノの密輸入で、突然税関に摘発された時に、「内部監査」と「教育」が適切にできていたかどうかは確実に問われます。

その時に、「内部監査」等がきちんとできていれば、その証明ができれば、問題は大きくならないでしょうが、そうでないと、次に会社自身の責任を追求されることになりかねません。転んでから杖にすがっても遅いのです。

形骸化した内部監査は、全く無駄でしかないのです。

( → GTconsultant.netにできること )

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