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AEO認定事業者

日本には特別な特恵関税がある

外国から商品を輸入するときには関税が課されます。日本の関税率は、法令や条約(協定)で、基本税率、暫定税率、協定税率及び特恵税率の4種類にEPA(経済連携協定)税率を加えた五つに分類され、実際に輸入される貨物には、このうちのどれかが適用されて、その税率が有税の場合は、消費税などと合わせて納税してからでないと貨物を引き取ることはできません。

まあ、そんなことは、もう言うまでもないことですが、今日は、特恵関税のお話をしたいので、ちょっとだけ基本的なことを前振りしてみました。

galata, Istanbul,Sinasi Muldur, Pixabay
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関税率には優先順位がある。

日本では、全ての品物(2022年4月現在7,658品目)に基本税率が設定されています。そのうちの一部は無税です。

そして、暫定税率は、様々な理由から有税品の基本税率を基準に引き下げられて設定されています。

このため、暫定税率の設定がある品目(412品目)は、暫定的に(当該年度末まで)、常に基本税率より暫定税率が優先適用されます。

協定税率は、WTO加盟国向けの税率です。最恵国待遇(Most Favorite Nation)による税率であることから、MNF税率とも言われます。

協定税率は、WTOの前身であるGATTの時代から、累次の関税引下げ交渉を経て、全体に基本税率より相当低くなっていることが多いと思いますが、前提として、WTO加盟国で生産や加工がなされた品物に限定して適用されるものです。

協定税率は、暫定税率などよりも低い場合に、暫定税率より優先して適用されます。

なお、WTOに加盟していない国や地域であっても、実質的に最恵国待遇と同様の取扱いをしている国・地域については、相互主義に基づいて、協定税率の同率の「便益関税」が同じように適用されます。

特恵関税の制度は、もう半世紀以上前にできたものです。当時の先進国は、自発的に、開発途上国から輸入する貨物に特別に低い関税率を設定して、そうした途上国からの輸入を増やすことで、そうした国や地域の経済発展や工業化を促そうとしました。

特恵関税は開発途上国向けの特別な税率

先進国による特恵関税の恩恵を受けた開発途上の国や地域において、輸出の増加により経済が発展し、さらに工業化が進めば、そうした国や地域の国民の生活水準が上がって、先進国の様々な製品の市場が拡大するでしょう。

また、教育水準の向上や投資の拡大に伴って、より低廉かつ有能な工場と工員が手に入るという、先進国にとっても都合が良い成果が期待されていたのだと思います。

よって、特恵関税に大切な要素は、まず、その貨物がその製造国(開発途上国又は地域)で作られたものか、ということです。

例えば、先進国から輸入された部品を単に組み立てただけとか、袋詰めしただけ、箱詰めしただけでは、開発途上国や地域の経済の発展と工業化に資することになりません。きちんとした水準の加工や生産がその国や地域の中でなされなければならない、という考え方です。

そのために、特恵原産地基準が作られました。

特恵原産地基準を満たす必要がある。

日本の特恵原産地基準の原則は、「HSの項の変更」とされています。

つまり、特恵受益国(地域)で、他の国(地域)から輸入した原材料を加工してできた製品については、「HS4桁レベルの変更が伴うような製造や加工」が必要である、という原則です。そうしてできた製品を「実質加工品」と言います。

また、実質加工品の証明は厳格になされなければならないので、当該特恵受益国(地域)の税関や商工会議所などの公的機関が行うこととされました。

また、開発途上国から輸入されるものの中には魚や肉、皮革、野菜、果物、木材、鉱物など、加工や生産の工程そのものを必要としない品物やそうした品物だけを原材料として加工、生産した品物も多くあります。そうした品物を「完全生産品」と言います。

勿論、そうした完全生産品についても、その国や地域の経済の発展や工業化に資することが期待できるので、当該国や地域の税関等が発給した原産地証明書があれば特恵関税を適用できます。

こうしてみると、特恵関税の適用は、現状のEPA税率の場合と運用方法に大きな違いはないと考えて良いようですね。

salvador-Brazil soel84, Pixabay 2379443_1920
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一般特恵関税制度と特別特恵関税制度の2種類がある。

さて、特恵税率は、暫定税率を含めた通常の関税率より低い税率か又は無税(の税率)が設定されているので、それだけ輸入された後の価格競争力が高まります。

だから、国内の競合する産業や国産品などへの影響を考慮して、適用できる品物や受益国や地域が限定されています。

また、特恵関税には、一般特恵関税(税率)と、特別特恵関税(税率)の2種類があります。

一般特恵関税とは、特別特恵関税の受益国以外の受益国からの輸入品に適用される特恵関税で、現在86か国(地域)がその対象として指定されています。

一方、特別特恵関税は、国連の決議で後発開発途上国(→ Least Developed Countries )にリストアップされている国のうち、日本が一層の便益を与えるべきと認めた国(45か国)に対して設定されている特別な特恵関税で、税率は全て無税です。

少し前(2020年11月9日財務省・関税分科会)の数字ですが、今、関税が有税の農水産品(HS1類~24類)1,972品目のうち、416品目(約21.1%)に一般特恵関税が設定されています。

また、鉱工業産品(HS25類~97類)では、有税品4,241品目中、3,199品目(約75.4%)に一般特恵関税が設定されています。どの品目かは、税関ホームページから、関税率表を参照していただければ容易に知ることができます。

一方、特別特恵関税については、農水産品(HS1類~24類)のうち1,810品目(約91.8%)に、鉱工業産品(HS25類~97類)では、4,194品目(約98.9%)に設定されています。

特恵関税の受益国(「特恵受益国」及び「特別特恵受益国」)131か国(地域)は、告示(→令和4年3月31日財務省告示第95号)で指定されています。

勿論、我が国の貿易統計で輸入総額が大きい米国、欧州諸国、中国や台湾、韓国、などの国は開発途上国ではないので、特恵受益国に入っていませんが、例えば、インド、インドネシア、ベトナム、フィリピンなどは特恵受益国です。

一方、特別特恵受益国には、主要な貿易相手国としては、いわゆるCLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)やバングラデシュなどが含まれます。

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一般特恵税率とEPA税率ではどちらを優先適用するか。

日本では、現在、20のEPAが発効していますが、それらEPAの締約国の中には、先ほどの特恵受益国等のうち、インドやインドネシア、ベトナム、フィリピン、CLMなどの国が含まれます。では、特恵税率とEPA税率では、どちらも輸入者が使いたい方を使うことができるのでしょうか。それとも、どちらかを優先的に適用するのでしょうか。

関税暫定措置法施行令(→ 第25条別表)には、EPA税率が一般特恵関税の税率より高い場合を除き、EPA税率のみが適用されると、明確に規定されています。

つまり、「EPA税率≦一般特恵税率」の場合は、EPA税率のみ適用可能です。

この場合、例えば、EPAの原産基準は満たしていないが、一般特恵関税の原産地基準は満たしているので、一般特恵税率を使いたい、と言っても使えません。

また、「EPA税率>一般特恵税率」の場合は、一般特恵税率も適用可能です。

この場合、例えば、EPAの原産基準は満たしているが、一般特恵関税の原産地基準は満たしていないので、税率は少し高いがEPA税率を使いたい、と言ったら使うことは可能です。

従って、インドやベトナム、インドネシアなどの国から輸入する場合は、EPA税率の適用が原則であり、特恵税率が使える品目は限定的だといえます。

この限定的な品目は、税関ホームページ(→ 一般特恵税率の適用が可能な品目)で公表されていますが、EPA税率が年々引き下げられていく品目については、個々のEPA協定のステージング表(→ ステージング表)にも、十分留意する必要があります。

特別特恵税率はEPA税率があっても適用できる。

なお、上に記載したルールは、一般特恵税率とEPA税率に関するルールなので、特別特恵税率には適用されません。

つまり、CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)については、アセアンEPA協定(AJCEP)の締約国でありながら、特別特恵受益国でもあるので、EPA税率と特別特恵税率のどちらも、輸入者の使いたい方を使えます。

さて、今、日本の特恵関税制度は、過渡期を迎えていると言えます。

特恵関税の適用実績は、月ごとにまとめて税関から公表されています(→ 特恵関税の適用輸入実績)が、最新の数値は、2022年4月分で、全体で約550億円でした。

このうち、バングラデシュやカンボジア、ミャンマー(いずれもLDC)など上位5か国で468億円(約85.0%)を占めています。

2018年度に中国産品の一部が特恵関税制度から除外される前の2017年4月の実績は1,126億円(中国産品が全体の約64.0%)でした。思ったより減っていないな、というのが実感ですね。

でも、今、RCEPを始めとするEPAに注目が集まっていますが、私のイメージでは、特別特恵関税が無税で簡単、使いやすい。

この点を、次回以降で、もう少し掘り下げてみようと思います。

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