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貿易実務

ロシアを原産地とする品物はWTO税率不適用に

依然、多くの人命が刻々と失われていくウクライナで、何とか頑張って欲しいと思う、そう強く思うことしかできないのが現実ですが、そう思わない人が沢山いるのも現実です。

人の世の仕組みがそういうことならば、まあ、自分も、そのことを悲しがるしかないのでしょうか。

暫定的に協定税率を適用しないことができるように。

日本の対ロシア制裁の一環として、同国原産品に対するWTO協定税率の不適用が決定し、4月21日から適用されています。

制度としては、関税暫定措置法の一部改正法(→ 令和4年法律第27号)で、同法第3条を追加(改正)し、関税法第3条の例外として、協定税率の適用が相応しくないときは、暫定的に基本税率又は暫定税率を適用するというものです。

対象国(地域)や対象品目は政令で定めるとされ、法改正と同時に関係政令(→ 令和4年政令第179号「国際関係の緊急時に特定の国を原産地とする物品に課する関税に関する政令」)が発布されています。

この政令によれば、対象国は「ロシア」のみ。対象物品は「全品目」。期間は、令和4年4月21日から令和5年3月31日まで、となっています。

今回の法改正の内容は、以上のとおり極めてシンプルです。ロシアを原産地とする全ての貨物については、今年度一杯、基本税率又は暫定税率が適用されます。

また、今回の制裁措置に関しても、税関から注意喚起の通達(→ こちら)が公開されていますので、迂回輸入に対処するための審査や検査の強化(原産地証明書の提出を求められる場合が生じるなど。)への対処も必要です。

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関税率は基本的に4種類。

そもそも、関税法では次のとおり規定されています。

(課税物件)

「第3条 輸入貨物(信書を除く。)には、この法律及び関税定率法その他関税に関する法律により、関税を課する。ただし、条約中に関税について特別の規定があるときは、当該規定による。」

ここに言う「条約」には、WTO協定(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定)のほか、RCEP等の経済連携協定(EPA)、ATAカルネに関する協定、コンテナ―の簡易的な通関等に関する条約などが含まれます。

よって、こうした協定や条約の対象貨物の通関に当たっては、本来、関税法や関税定率法など国内法で定める税率や手続きを超越して、様々に有利な取扱いが期待できることになっています。

日本の関税率の種類は、大別して4種類あります(→ 実行関税率表の例(3類:魚並びに甲殻類、軟体動物及びその他の水棲無脊椎動物)。基本税率、暫定税率、WTO協定税率及び特恵税率です。

このうち、特恵税率は、開発途上国向けに特別に低率な関税率を適用するもので、「ロシア」はこの対象国ではないので、適用がありません。

実行関税率表には、この他、特別特恵税率とEPA(経済連携協定)税率が掲げられていますが、特別特恵税率は、さらに後発の開発途上国に対する特別な便益を提供するもので、対象国は、アフリカやアジアなどの一部の国に限定されています。

勿論、ロシアと結んだEPAはありませんので、適用できるEPA税率はありません。

関税率の種類や適用順などについて、詳しくは、税関のカスタムスアンサー(→ 関税率の種類)をご参照ください。

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暫定税率の対象品目は多くない。

では、基本税率と暫定税率の関係はどの様になっているでしょうか。

関税暫定措置法には、以下の規定(一部要約)があります。

(趣旨)

「第1条 この法律は、国民経済の健全な発展に資するため、必要な物品の関税率の調整に関し、関税定率法及び関税法の暫定的特例を定めるものとする。」

(暫定税率)

「第2条 別表第1に掲げる物品で令和5年3月31日までに輸入されるものに課する関税の率は、同表に定める税率とする。(第2項:省略)」

この関税暫定措置法別表1(→ こちら)には、現在、ナチュラルチーズ(プロセスチーズ原料用)、米、麦、指定乳製品、砂糖類(角砂糖、砂糖水、加糖調製品等)、冷凍さば等水産物、牛肉、豚肉、紙巻たばこ、石油化学製品製造用揮発油など、412品目が掲げられています。

一応、適用期間は今年度末までの限定で、国内産業への影響等を踏まえて基本税率より低い税率が設定されています。

関税が有税の品目数は、およそ6,200品目あり、この他に関税無税の品目も3,000品目以上ありますので、つまり、有税品の殆どは基本税率が適用されると言っても良いかと思います。

読者の皆さんにとって、関心の高い品目の税率がどの様になるのかは、税関ホームページの関税率表からお確かめください。(→ こちら

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ウクライナへのロシアの侵攻に関する日本政府の制裁に関しては、輸出に関するもの、輸入に関するもの、支払規制、支払い手段や貴金属の輸出規制など、多岐に亘ります。その全体像を知るうえで、以下の当ブログも是非、ご参照ください。

2022.3.15 対ロシア制裁に伴う輸出入規制の内容

2022.3.30 対ロシア向け奢侈品や貴金属などを輸出禁止に

2022.4.15 対ロシア制裁としてウオッカや木材等を輸入禁止に

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ご意見やご質問などがございましたら、当方の業務内容やプロフィールに一度目を通されて、どうぞ、電話やメールで、お気軽にお寄せください。(→ お問い合わせ

また、私は輸出入通関手続の全般に関して、実務上の問題点の洗い出しや課題の解決に向けたアドバイスが可能です。詳細は、こちらをご覧ください。(→ 貿易・通関・保税に絡む問題を解決したい GTConsultant.net

(最終更新:令和4年4月25日 午後4時05分)

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