前回の投稿から少し時間が経ってしまいましたが、今回もワシントン条約についてお話します。
実は、税関で輸入を差し止められたワシントン条約該当物品については、一件ごとに、その動植物の種類や形態、輸送形態や輸出国等を、税関ホームページで確認することができます。
ちなみに、今回は、昨年分の実績「ワシントン条約該当物品輸入差止等実績(令和元年)(→ こちら)を参照しつつ、前回は、動物を中心に説明したので、今回は、植物界から代表的なものを抽出してみましょう。
木香は、漢方薬等に使われます。
まず、「木香」です。ワシントン条約の附属書Ⅰ該当ですから、基本的に商業目的の国際取引は認められていません。
「木香」の学名はSaussurea Costus、別名でKostus, Kuth, Costas rootと記載されています。インターネットで検索すると、Saussurea Lappaという学名もヒットしますが、同じもの(Synonyms)です(→ こちら)。
元々は、インド原産ですが、古くから咳止め、整腸、抗菌などの医学的な効能が知られていて、現在でも主に漢方薬や生薬の原料として利用されています。また、「木香」は、その名称から「香木」の一種とも勘違いされやすいですが、キク科の植物(草)の根の部分です。でも、やはり、その名称のとおり香りも良いので、化粧品の原料などにもなるようです。
ただし、最近は原料の入手が困難なこともあってか、原料に「木香」を使用していると称しつつ、実際には代替品(ワシントン条約非該当)が使用されているケースもあるようです。
でも、前回の動物編でも申し上げたように、ワシントン条約の輸出入規制は、種から製品にまで幅広く適用されるので、例えば、中国から取り寄せた漢方薬の箱に「木香」と表示されていれば、代替品を使用しているとの証明がなされない限り、輸入はできないことになります。
アロエベラはセーフ、キダチアロエはアウト。
次は「アロエ」です。アロエ全種が附属書Ⅱに該当しますので、最低でも、輸出国の輸出許可書(CITES)を提出しないと輸入はできません。また、一部の種がワシントン条約附属書Ⅰに掲げられています。
「アロエ」は、ヨーグルトにも入っていて、健康に良いと聞きますので、私も時々食べています。でも、こちらの「アロエ」は、おそらく「アロエベラ」(Aloe vera, Aloe barbadensis )で、ワシントン条約附属書からは除外されています。(→ こちら)
一方、「キダチアロエ」(学名:Aloe arborescens、別名:Krantz aloe, candelabra aloe)も、植栽用、薬草の原料、食用(お茶)として栽培され、日本ではよく目にする種類ですが、こちらは附属書Ⅱに該当するので、注意が必要です。
よって、製品の箱に、単に「アロエ」としか書いてない場合に、これが「アロエベラ」であるという証明書か、「キダチアロエ」だったら輸出国の許可書を提出できなければ輸入できないことになります。
ローズウッド(紫檀)は、高級家具や楽器などに使われる。
今回は、もう一種類、「ローズウッド Rosewood」についてもご紹介しましょう。年長の方には「紫檀」といった方が分かりやすいかもしれません。
磨くと美しい光沢が出て、見た目が良く、耐腐食性も高いので、高級家具や仏壇、指物、細工物、弦楽器、木管楽器、打楽器、ナイフの柄などに広く利用されてきました。
さて、ローズウッドも、ブラジリアン・ローズウッド(学名:Dalbergia nigra)がワシントン条約附属書Ⅰに該当し、それ以外の種類は「製品として完成したもの」や「完成した楽器、楽器の部品、付属品」以外の形状のものは、全種(マメ科ツルサイカチ属全種)が、全て附属書Ⅱに該当します。
特に、最近は、高級ギターのバック材、サイド材として人気があります。なので、例えば、EC(電子商取引)で、有名ブランドの高級ギターを見つけても、ローズウッド製かどうかを確認して、そうであれば、どの種類のローズウッドか説明できる必要があります。購入時に、そうした証明書や輸出許可書をきちんと要求しておかないと、いざ輸入の際に税関で止まってしまう事態になりかねません。
欧州等の高級家具、アンティーク家具等も、「紫檀」が使われている場合は、購入の際に輸出許可書の有無を確認する必要があります。
一方、ローズウッドは美しく、希少価値があり、つまり高級なので、本当はローズウッドではないのにローズウッドとして売られている品物もあります。それはそれで注意が必要ですね。
次回は、ランとサボテンを中心に、ワシントン条約の続きをお話したいと思います。
この記事へのコメントはありません。