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保税地域

保税展示場では万博以外に何ができるか

昨年(2025年)4月13日から大阪港の夢洲で開催された大阪・関西万博は、同年10月13日に閉幕しました。

その会場は、「保税展示場」になっていて、海外から持ち込まれた展示品等には高価なものや珍しいものが沢山あったと思いますが、これらの持込みには関税や消費税がかかっていませんでした。

遅まきながら、今回は、その保税展示場についての解説です。

始まりは1970年に開催された大阪万博

保税展示場の制度は、元々、1970年に開催された日本初の万博である大阪万博(日本万国博覧会)の開催に合わせて、1967年に作られた制度です。

つまり、この制度自体が、日本で万博を開催するために必要だったから作られたということですね。

よって、その後の沖縄海洋博(沖縄国際海洋博覧会、1975年)、つくば博(国際科学技術博覧会、1985年)、大阪花博(国際花と緑の博覧会、1990年)、愛・地球博(2005年日本国際博覧会、2005年)でも、同様に保税展示場の制度が利用されています。

では、なぜ、万博を開催するのに保税展示場の制度が必要だったのか。

まず、それを、これから見ていきましょう。

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外国貨物のまま「展示・使用」をするということ

保税展示場では、外国貨物の「展示・使用」を行うことができます。

ここでいう「展示・使用」とは、外国から万博会場などに持ってきた貨物を来場者に見せるために陳列し、そうしたものでその国の技術、文化や芸術等を宣伝し、装置などを使って実演し、催し物として催行するものだと考えてよいでしょう。

それらの行為を、外国貨物のまま、つまり、いくら高価なものでも関税や消費税等を払わないで、行うことができます。

勿論、陳列用具などの調度品や装飾品なども展示品と同様に保税のまま使うことができます。

更に、そのパビリオンの事務所で使う家具や事務用品その他の博覧会の運営に必要なものも、保税のまま設置し、使用することができます。

この外国貨物の「展示・使用」は、保税展示場と総合保税地域以外の保税地域で行うことは、基本的にできないと思ってください。

保税展示場以外の保税地域では「輸入許可前の使用」は「輸入」とみなされる

関税法の規定では、外国貨物を輸入する(税関の輸入許可を受ける)前に「使用、消費」する場合は、その「使用、消費」する時に「輸入するものとみなす」とされています。(⇒関税法第2条第3項

気を付けるべきは、この解釈が、その使用や消費の場所が保税地域の中であっても、外であっても同じだということです。

例えば、外国から持って来たパソコンを輸入の許可を受けないまま保税蔵置場の中で「使用」すると、税関の許可なく輸入したとみなされる可能性があります。

また、例えば、外国から到着したワインを、瓶のラベルが破れていて売り物にならないので、輸入申告せずに保税蔵置場の中で飲んでしまった(消費した)という場合も、やはり税関の許可なく輸入したということで、関税法第111条の無許可輸入罪に問われ、処罰される可能性があります。

一方で、関税法上の「輸入」とは、「保税地域から引き取る(持ち出す)こと」と定義されている(同法第2条第1項第1号)ので、保税地域の外に持ち出さないで使用又は消費することは輸入ではないと勘違いされる場合があります。

要は、「使用又は消費」すること自体が、国内の市場に入ったこと(輸入)と同じだという考えですね。

そして、保税展示場では、この外国貨物のままでの「使用」が、その目的に適っていれば「輸入」とはならないということです。

保税展示場内では、関税法の基本的な考え方からすれば例外として、最初から合法的に「使用」が認められる、という点が、万博会場が保税展示場の機能を必要とする一つの理由と言えるでしょう。

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展示は「輸入とみなす」とはなっていないが

では、外国貨物を保税地域の中で「展示」することはどうでしょうか。

保税地域では、外国貨物について、内容の点検や改装、仕分け、その他の手入れ等の様々な「取扱い」が認められています(⇒関税法第40条第1項)。

また、同様に、「簡単な加工」、「見本の展示」及び「これらに類する行為」は、税関長の許可を受けて行うことがでる「取扱い」行為です(同法第40条第2項)。

「見本の展示」という言葉が出てきました。

関税法基本通達では、この「見本の展示」について、「注文の取集め等のため蔵置貨物の一部を一般の閲覧に供すること」と解説しています。(⇒関税法基本通達40-1(5)

つまり、保税蔵置場などの中で、税関長の許可を得て行う「展示」は、「使用」と異なり、まず、輸入とはみなされないということですね。

この方法によれば、例えば、外国から到着したビンテージ小物などを、輸入の許可を受ける(関税等を納付する)前に、「取扱い」の許可を受けて、何人かの買手に見せて、注文を取ることができます。

注文を受けたら、当該買手に保税転売するか、自身で輸入許可を受けてから買手に商品を渡すことになるでしょう。

勿論、その買手が例えば外国人で、外国へ送って欲しいと言われた場合は、関税や消費税を払わずに、そのまま積戻しすれば良い訳です。

しかし、そもそも保税蔵置場や指定保税地域は、輸出入通関のための利便を目的とした場所であって、万博のように国内外の不特定多数の人に「見せる」ことを目的にした場所ではありません。

そのため、「見本の展示」は税関長の事前の許可を要することとしています。

「許可」とは「禁止の解除」であるというセオリーに従えば、この許可は必要な要件を満たした特別な場合に許される、と考えた方が良いようです。

税関としても、専ら外国貨物の展示を目的とする施設に対する保税地域は、保税展示場を適用することとし、保税蔵置場の許可は行わないこととしています。(⇒関税法基本通達62の2-2(1)

よって、この点も、外国から来た珍しいものなどを沢山の人に見せるための万博会場が、保税展示場の機能を必要とする一つの理由と言えるでしょう。

 保税展示場内での「使用・展示」は有料でも良いのか

万博会場内では、様々な外国のパビリオンやその展示等の多くは無料でした。

でも、一部の企業パビリオンや体験型パビリオンでは、万博会場の入場料の他に別料金をいただいて見せるとか、体験させるところがあったと思います。

さすがに、有料で見せる(展示する)、体験させる(使用する)ことは、国内市場に入ったと同じで、保税では認められないのではないか。

実はそのとおりで、保税展示場で「有償で観覧若しくは使用に供される貨物」は、保税展示場に入れても良いが、展示・使用はできないとされています。(⇒関税法施行令第51条の3第2項

なお、この「有償で」の解釈については、実費を超えない対価を徴収する場合は含まれません。(⇒関税法施行規則第7条

また、そもそもの国際博覧会等の入場料も、この「有償」には含めないとされています。(関税法基62の2-9(4)なお書き)

では、実際に有料で見せたり、体験させたりしたパビリオンはどうなのか、ということですが、実費を超えない範囲だったか、外国貨物ではなかったのではないかと思います。

つまり、保税展示場で「展示・使用」されているものには、外国貨物のほかに、そもそも国内産であるとか、輸入許可を受けたもの(関税等を納付済みのもの)も混じっているということですね。

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万博の開催期間も、その前も、その後も外国貨物のままでいい

次は、外国貨物の蔵置期間について考えます。

保税地域には、指定保税地域、保税蔵置場、保税工場、保税展示場及び総合保税地域の5種類があります。

このうち、総合保税地域は保税蔵置場、保税工場及び保税展示場の機能を同時に持つ保税地域なおで「展示、使用」が可能ですが、保税展示場と併せて説明すると混乱するので、本稿では外しておきます。保税工場も、本稿と殆ど関係ないので、同様に外しておきます。

指定保税地域では、外国貨物を入れて、そのままにしておける期間は1か月以内とされています。

また、保税蔵置場は、同様に3か月以内です。ただ、この期限を超えて置くことも可能で、その場合は、別途、税関長の承認を受ける必要があります。この制度を「蔵入承認」と言います。

この蔵入承認貨物を保税蔵置場に置ける期間は、原則として2年以内となっていて、そもそも長期蔵置を目的とした制度と言えます。

よって、この長期蔵置貨物の場合を除けば、本来は、先にも言ったように、いずれも輸出入通関等の手続きを容易にするために外国貨物を入れる保税地域です。

つまり、輸入でも輸出でも、荷主は港での滞留はできるだけ短い方が良く、税関側も、外国貨物のまま保税地域に留める期間が長ければそれだけ取締り対象が増えるので、外国貨物のまま港などに保管できる適当な期間として、この1か月とか3か月になっているのだと考えます。

一方、例えば、大阪・関西万博の開催期間は、前述のとおり6か月間でした。

しかも、パビリオンの建設などに相当の時間が必要であって、当然、開催の相当前から資材や調度類、展示物品などをその場所に入れる必要があります。

また、閉幕後も、相当の期間、撤収のための作業などの期間が必要です。

実際に、大阪・関西万博会場の保税展示場の許可期間は、2023年3月13日から2026年4月30日まで、と実に3年を超えています。

保税展示場では、万博以外に何ができるのか

これまで見てきたように、保税展示場では、他の保税地域ではできない様々なことができます。

だからかもしれませんが、保税展示場の許可を受けることができる場所は、以下のような博覧会、見本市その他これらに類するもの(博覧会等)の場所に限定されています。(⇒関税法施行規則第5条

  1. 国際博覧会に関する条約の適用を受ける国際博覧会及び国際機関、日本や外国の政府若しくは地方公共団体が開催する博覧会等
  2. 一般社団法人又は一般財団法人が開催する博覧会等で税関長が承認したもの
  3. JETROその他これに準ずる者が開催する博覧会等
  4. 国際機関、本邦若しくは外国の政府若しくは地方公共団体、一般社団法人若しくは一般財団法人又はJETRO等が後援する博覧会等で、税関長が承認したもの

つまり、保税展示場は、国際機関、国や地方公共団体など、公共的な機関が主催する展示会等が前提になっているようです。

この公共的な機関には、勿論、上野の国立西洋美術館や、京都の府立京都文化博物館など、公共的な美術館や博物館などが含まれます。

一方で、開催場所そのものは公共的でなくとも構いません。

例えば、昨年の秋に東京ビッグサイトで開催されたJapan Mobility Show2025の場合は、保税展示場の許可を受けたのは主催者である一般社団法人日本自動車工業会で、ビッグサイト自体は株式会社東京ビックサイトが運営しています。(⇒Japan Mobility Show 2025

つまり、全国に数多ある私立の美術館や展示館などでも、自身が主催する展示会等では保税展示場の許可を得るのは難しいかもしれませんが、一般社団法人などが主催する展示会等であれば、保税状態での展示・使用、そして「販売」ができるかもしれません。

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保税展示場では、展示のほかに外国貨物の販売もできるのか

大阪・関西万博では、主に外国の革新的技術やアート作品、工芸品等が陳列され、上演され、実演されました。また、各会場では、各国の特産品、珍品、限定品などが展示され、販売されていました。

企業ブースでも、ビジネス目的の新商品の紹介や商談などが行われたと思います。

どうも保税展示場では、外国貨物(輸入の許可を受けない)ままで、販売もできそうな気配です。

保税展示場へ入れる手続きを「展示等申告」と言い、税関長の承認を受けます。税金を納付するものではないので、割に簡便な書式(⇒税関様式C-3340「展示等申告書」)で、運送兼用になっています。

会場に持ち込んでからこの様式で展示等の承認を受けても良いし、別の保税地域で展示等申告してから展示場に持ち込むことも多いでしょう。

そして、この様式には「販売物品・消費物品」というカテゴリーがあります。

しかし、保税展示場内で販売(小売販売)され、消費され、又は有償で観覧・使用される貨物は、展示等申告の対象ですが、そのままでは保税展示場内で「展示・使用」ができません。

ただ、そうしたものの「蔵置、積卸し、運搬、内容の点検及び改装、仕分その他の手入れ」のみはできるとされています。(関税法施行令第51条の3第2項)

よって、小売販売され、直接消費され、又は有償で見せ、体験させる貨物は、会場に搬入した後も、他の展示物等とは別に管理し、販売等に先立って輸入申告し、関税や消費税等を納税の上、許可を受けてから陳列棚に並べ、配置するということです。

もう一つ、無償で提供されるものなどは、保税地域とは別の方法で関税等の負担軽減が可能です。例えば、カタログやパンフレット、無償で提供される試供品、見本品、記念品などです。

これらの品物も、「展示・使用」ができない品物になりますが、輸入通関の際に無条件免税(⇒関税定率法第14条第3号の3)や特定用途免税(同法第15条第1項第5号の2)などの適用を受けて、関税や消費税の負担なしでの輸入することができます。

なお、展示等申告する貨物が、例えば食品衛生法等の他法令で規制されている場合は、その手続きを先に行っておく必要があります。

オークションは保税蔵置場を使う

これまで述べてきたように、保税展示場は、公共的な色彩が強く、開催期間が決まっている展示会等の利用が見込まれています。

なので、例えば、外国から高価な、珍しい品物を持って来て、購入を希望する者に保税状態で見せて、契約が整ったら売る、という場合には不向きのように思えます。

そういうオークションやオークション・ギャラリーを行う場合は、保税展示場ではなく、保税蔵置場の利用が便利です。

この機能は、2020年の通達改正によって実現したもの(⇒2020年11月30日付財関1003別紙)です。

いわゆる「注文の取集め等のための個別に識別及び管理される貨物」について、前述の税関長の許可を要する「取扱い」の手続きの下で、厳重な貨物管理と顧客の入退出管理等を組み合わせて外国貨物を管理します。

その上で、出品物をオークションにかけて、購入の申込みがあれば、その予約のみを受け付けて、当該保税蔵置場等で輸入又は積戻しの許可を受け、その後で購入者に引き渡すという流れが基本となります。

実際に、羽田空港では、保税蔵置場でのオークションの商業化に成功しているようですね。(⇒羽田空港ターミナル公式サイト

これで、保税展示場に関する解説を終わります。

******************************

前回のブログでも紹介しましたが、宜しければ、以下の当ブログも、ご参照ください。

2019.11.19 輸入する貨物の保税蔵置場は、例えれば「風除室」とか

2020.10.11 保税工場を“生産拠点の国内回帰”に活かそう

また、ご意見やご質問などがございましたら、当方の業務内容やプロフィールに一度目を通されて、どうぞ、電話やメールで、お気軽にお寄せください。(⇒ お問い合わせ

また、保税展示場や保税蔵置場の許可申請などについてのフォローを請け負っています。或いは、保税蔵置場などの現場の皆さん向けのセミナーなども行っています。

最近、保税蔵置場への規制が少し強化されつつありますので、外国貨物搬入停止等のリスクを軽減し、適正で円滑な保税業務の継続のためには、保税現場で働く皆さんに対する社員教育は、特に重要だと思います。

詳細は、こちらをご覧ください。(⇒ 貿易・通関・保税に絡む問題を解決したい

road-train-monikawl999_Pixabay 1185254_1280輸入許可前引取り制度についての続きの解説前のページ

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