外国から商品を輸入するときは、一日でも早く手に入れたいと思うのが普通でしょう。
でも、輸入は、通関手続、つまり税関に輸入申告書を提出し、その審査や貨物の検査を受けて、問題がないとして輸入許可がなければ、商品を保税地域から引き取ることはできません。
なので、税関への輸入申告書の提出が早ければ早いほど税関の審査も早く終えることができる、とすると、いつ、どの様な条件が整ったときに、そのアクションを起こすことができるのか。
今回は、その辺りを少し考えてみたいと思います。
原則は、保税地域に搬入した後なら、輸入申告できる
一般的に、税関への輸入申告の時期は、関税法において、
輸入申告は、その申告に係る貨物を保税地域等に入れた後にするものとする。
と、規定されています。(⇒関税法第67条の2第3項)
これが、輸入申告をすることができる時期に係る法令上の原則です。
なお、保税地域等には、指定保税地域や保税蔵置場のほか、保税地域に入れられない場合の他所蔵置場所を含みます。
これを「保税搬入原則」と言います。
例外として、「本船(ふ中)扱い」等の承認を受けた場合や、特例輸入者等の場合は、貨物を保税地域にいれることなく輸入申告が可能です。
こうした考え方の根本には、単純に、税関が現物を見て輸入許可の是非を判断できるようになる時点まで、或いは輸入することが確実になった時点まで輸入申告しないで欲しい、という考え方があるのかもしれません。
ちなみに、「本船扱い」とは、日本に到着した本船に積んだままで輸入申告し、税関の審査、検査を受けることができる制度で、小麦や石炭、ウッドチップなどのバルク貨物などが対象です。
また、「ふ中扱い」の「ふ」は、艀(はしけ)のことで、本船から別の小船に移して申告をかけるものです。こちらも、食用油や木材、鋼材などが対象となっています。
搬入後でなければならない理由は何か
この、保税搬入原則が、どういう考えなのかはさておくこととしても、通関業者や輸入者からは、別の観点から異論があるかもしれません。
例えば、商品の輸入は、外国の売手との間で売買契約が成立するか、或いは、メールなどで当該商品を注文することで始まります。
この輸入取引が成立したときに、その商品の申告ができて、納税して税関の許可が得られれば、日本に到着して、船から卸されて直ぐに市場などに直行できそうです。
でも、この時点で、品名や数量、価格、輸入の時期は、ほぼ間違いないでしょうが、まだ、輸入が確実というわけではありません。
では、その後、商品を発送した旨の連絡があった時点ではどうでしょう。
代金の支払いは、半額を前金で払って、あとの半額は発送を確認できた時点で払うという取決めなどがあったとしても、或いは、銀行経由で支払いと書類の受取りを行うとしても、いずれにしろ、貨物が発送されれば、インボイスやその他の船積書類も入手が可能です。
つまり、税関が貨物の検査をするのは、貨物が日本に到着してからで仕方ないけど、輸入申告の手続き、或いは税関の書類の審査そのものは、商品が発送されたら認めていいのではないか。

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輸入申告は円貨価格で行うことが必要
インボイスが手元にあっても、運賃や保険料等が先払いになっていなければ申告は難しいかもしれません。
ならば、そのインボイスの取引価格の建値(インコタームス)がCIF等であれば輸入申告できるのではないか。
或いは、運賃や保険料など、いわゆる「加算要素」が別の書類等で分かっている場合は、その価格で輸入申告できそうです。
しかし、普通は、輸入申告の際に関税や消費税等の納税申告も行いますね。その税額の計算は円貨で行います。
つまり、輸入申告価格は、米ドルなどの外国通貨建ての場合は、日本円に換算する必要があります。
そして、その換算レートは、税関から公示されるレートを使用することとなっています。
とすると、少なくとも、その換算レートが公示された後でなければ、外国通貨建ての取引に係る貨物の輸入申告はできない、ということが分かります。
ちなみに、この換算レートの公示日は、多くの場合、申告日が属する週の前週の火曜日です。
これは、申告日の属する週の前々週の為替レートの平均値を税関の公示レートにすることとなっていることによります。(⇒関税定率法施行規則第1条)
つまり、輸入申告する日の換算レートが実際の市中の為替レートとなるべく近い値になるようになっているのだと思われます。
だとすると、換算レートが公示されたあとならば、申告書の提出は可能ではないか。
前週の火曜日以降、換算レートが判明した後なら、保税地域へ搬入しなくとも、一日でも早く輸入申告できれば、その分早く許可になるので、その方が良いですよね。
輸出申告は、保税搬入原則の適用がない
ここで、「輸出申告できる日」に目を転じてみます。
実は、輸出申告は保税地域への搬入が申告の条件とはなっていません。
以前は、輸出申告も保税搬入原則が基本でしたが、2011年度の関税法等の改正によって見直しがなされ、同年10月から保税地域に入れる前に可能となりました。
当時は、今の政権と異なる政党が政権を担っていた時代で、事業仕分けや規制改革の嵐が吹き荒れていた頃に、政府の「規制・制度改革に係る対処方針」などに盛り込まれて実現したものです。
もっとも、その前から、機械類を輸出する企業の団体などからも要望が寄せられていて、税関当局としては不正輸出や消費税の不正還付を防止する観点から異論があった訳ですが、貿易の円滑化という観点から、輸出通関のみ、この保税搬入原則の適用を見直した訳です。
早いもので、もう15年前になります。
ただし、では輸出貨物は全く保税地域に入れなくて良いのかというと、そうではありません。
輸出貨物も、保税地域に入れた後でないと税関の許可は得られないこととなっています。
本稿は輸入申告の時期についての説明なので、輸出申告手続についてはこの程度で終わり、話しを輸入に戻します。

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輸入貨物も予備申告書なら保税地域への搬入前に税関に提出できる
輸出貨物は保税地域への搬入前に申告書類を税関に提出して、その審査を受けることができるのなら、輸入貨物も同様にできるのではないか。
実は、「予備審査制」(予備申告)においては、輸入貨物にも同じような方法がとられています。
予備審査とは、輸入申告において、貨物の保税地域への搬入前に申告書を税関窓口に提出して、予備的に、事前に、その審査を受けることができる、という制度です。(⇒税関ホームページ「予備審査制について」)(以下、「この通達」といいます。)
元々、この予備審査制は平成12年(2000年)に始まった制度で、先ほどの2011年度関税改正時まで、通達の対象貨物は、「全ての輸入貨物及び輸出貨物」となっていました。今は、「全ての輸入貨物」が対象となっています。
さて、では、予備審査対象貨物の輸入申告書、つまり「予備申告書」の提出時期はどの様になっているでしょうか。
この通達では、予備申告書の提出時期を、
輸入申告予定日における外国為替相場が公示された日又は貨物の船荷証券(航空貨物にあっては Air Waybill)が発行された日のいずれか遅い日
としています。
先ほどの、為替レートの公示日が出てきましたね。
その公示日と、B/Lの発行日、言い換えれば、貨物が仕出港(空港)で船積された日の、いずれか遅い日であれば予備申告書を提出して良いとなっている訳です。
ちなみに、B/Lは、主として、受取船荷証券(Received B/L)と船積船荷証券(Shipped B/L)があります。
私は、この通達のB/Lの発行日は、コンテナを輸出国の内陸のCYで受け取った旨のReceived B/Lの発行日でも良いと思いますが、税関の判断はその時の状況によって分かれるかもしれません。
この予備審査制については、当方の2022年9月19日のブログ(⇒「輸入の予備申告と通関士試験」)にも、少し詳しく説明していますので、ご参照ください。
税関検査があるかどうかは保税地域への搬入前に分かる、かもしれない
予備申告書は、保税地域への搬入時の内容と違わなければ、原則として、搬入と同時に輸入申告書に切り替わります。
そして、納税方法を銀行口座からの自動引落しなどにしていれば、殆ど搬入と同時に輸入許可になります。
ですが、勿論、税関検査が必要な貨物や、書類に問題がある貨物などは別です。
では、税関の検査があるかどうかは、その切替え前に教えてもらえるのでしょうか。
この通達では、税関検査の要否は、原則として、本申告への切替え前のできるだけ早期に輸入者(通関業者)に通知することとなっています。
でも、ここで安心してはいけません。
この通知は、税関が、事前に検査の有無を知らせても差し支えないと判断した場合に限る、となっているので、前もって教えてくれない場合もあります。
また、税関は、事前通知を行った内容を変更することも可能となっています。
つまり、予備審査の段階では「検査なし」となっていても、切替えと同時に「検査あり」に変わることがありうるということですね。
一般的には、税関検査は、密輸の取締りや、適正な納税の確保、他法令手続きの確認などの目的で行われます。なので、そうした問題のない商品であれば、殆ど危惧する必要はないでしょう。
とは言え、税関検査をできるだけ少なくしたいという方は、当サイトの2023年5月6日のブログ(⇒「税関検査を回避する方策はあるか」)をご参考にしてください。

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他法令の確認を受けてからでなければ輸入申告できない
ここで忘れてはいけないのが、他法令の確認ですね。
ちなみに、予備審査の通達では、他法令の許可、承認等を要する貨物については、本申告への切替えまでに証明書などを提出すれば良いとされています。
関税法(⇒第70条)では、この他法令を二つのジャンルに分けて規定しています。
第1ジャンルは、輸出入に関して許可や承認等を要する貨物、第2ジャンルは同様に検査又は条件の具備を要する貨物で、前者については輸出入申告の際に税関に証明しなければなりません。
後者については、税関の審査の際に証明しなければならないと規定していますが、実質的には前者と同様に申告の際に証明するものだと思っていただいた方が良いと思います。
よって、輸入申告の時期という点では、他法令に該当する貨物はその手続きが済んだ後、ということになります。
他法令の証明については、当方の2022年10月24日のブログ(⇒「他法令の証明は、申告の時か、審査・検査の時か」)をご参照ください。
本船(ふ中)扱い貨物は積荷目録の提出後に輸入申告できる
最後に、このブログの初めの方で触れた「本船(ふ中)扱い」について、気になる方がお見えかもしれませんので、少し補足しておこうと思います。
この本船(ふ中)扱い貨物の場合は、どの時点で輸入申告できるのでしょうか。
法令上は、当該本船の船長等が、当該港を管轄する税関に積荷の情報を税関に報告した後、又は積荷目録を提出した後とされています。(⇒関税法第67条の2第4項、同法第15条第1項など)
また、この場合の報告事項は、当該本船に積んでいる全貨物の品名、数量、荷送人、荷受人、B/L番号、コンテナ番号、船積港の出港日などとされていて、基本的に、入港の24時間前までに報告することとされています。(⇒関税法施行令第12条第2項など)
勿論、本船(ふ中)扱い貨物を輸入申告する場合は、あらかじめその承認を受けておく必要がありますので、本船扱い等の承認申請は、原則として、この積荷に関する事項の報告の前に行う必要があるでしょう。
また、この場合、承認申請と同時に輸入申告書を提出して、その事前審査を受けることもできます。
ちなみに、積荷に関する24時間前の事前報告と言えば、いわゆる「JP24」を想起する方も多いと思います。
こちらは、「船積港の出港24時間前の報告」を指しますので、先ほどの積荷の報告とは異なりますから、ご注意ください。
この「JP24」については、話が長くなりますので、また、いずれ。
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また、私は輸出入通関手続の全般に関して、実務上の問題点の洗い出しや課題の解決に向けたアドバイスが可能です。詳細は、こちらをご覧ください。(→ 貿易・通関・保税に絡む問題を解決したい GTConsultant.net )


















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