私は、通関士試験を目指す方向けのセミナーの講師を担うことがあります。また、そのときに、受講者から様々なご質問を受けます。
どの様な質問があるのか、どの様に答えたかを、当ブログでご紹介し、通関士試験を目指す方に、少しだけ、「勉強の方向性」とか、「勉強のやり方」の様なものをお考えいただければと思います。
通関士試験を目指す人の質問に答えて ②
〔質問:「特定輸出貨物」はよく見るが、「特例輸出貨物」というのは、どういうものか。〕
「特定輸出貨物」とか「特定輸出申告貨物」、「特定輸出された貨物」は、過去の問題でもよく目にするのですが、「特例輸出貨物」はあまり見かけない気がします。ネットなどでも、この違いを明確に説明しているものが殆ど見当たらず、よく分かりませんでした。違いや関連を教えてください。
〔回答:特例輸出貨物の方が、やや広い概念になりますが、重要な言葉です。〕
ご質問をありがとうございます。
確かに、この両方の言葉は見分けがつきにくいですね。
まず、「特定輸出貨物」は、特定輸出申告して税関長の許可を受けた貨物です(関税法第67条の8第1項)。
一方、「特例輸出貨物」は、特定輸出申告が行われた貨物のほか、同第67条の3第1項後段(輸出申告の特例)に規定する特定委託輸出申告と、同条第2項に規定する特定製造貨物輸出申告が行われて、税関長の輸出の許可を受けた貨物を言います(同第30条第1項第5号)。
特例輸出申告貨物の方が、やや広い範囲になりますが、保税地域に置く必要がない貨物とか、保税運送の承認を要せず国内運送できる貨物とか、或いは輸出許可の取消し手続きが可能かどうかといった中で引用されることがあります。
それぞれの条文をご確認いただければ幸いです。
〔回答の補足:輸出の許可を受けた貨物は外国貨物で、保管する場所等の制約を受けるが、特例輸出貨物はその例外として重要〕
関連する条文を見てみましょう。(⇒ 関税法 )
それぞれ、私なりに要約していますので、その前提でご覧ください。
① まず、関税法第2条第1項第3号(定義)です。
「外国貨物」とは、輸出の許可を受けた貨物と、外国から日本に到着した貨物で輸入が許可される前のもの(外国の船が公海で採った水産物を含む。)をいう。
② 次は、同第30条第1項(外国貨物を置く場所の制限)です。
外国貨物は、原則として、保税地域以外の場所に置くことはできないが、特例輸出貨物など一部の貨物は、例外としてこれを認める。
として、その第5号に、以下のとおり規定されています。
「特例輸出貨物」とは、特定委託輸出申告(67条の3第1項後段)や、特定製造貨物輸出申告(同条第2項)、特定輸出申告(同条第3項)を行って、その許可を受けた貨物のことをいい、いずれも外国貨物であるが、保税地域以外の場所に置くことができる
③ 続いて、同第41条は、以下のとおりです。
指定保税地域の指定が取り消された(保税地域でなくなった)場合に、そこに残っている外国貨物は、税関長が指定する期限までは、保税地域にあるものとみなす。ただし、特例輸出貨物については、この期限に関係なく、置くことができる。保税蔵置場や保税展示場等にある場合も同様とする。
④ 保税運送については、同第63条第1項で、次の様に規定されています。
外国貨物は、税関長の承認を受けた場合に限って外国貨物のまま運送することができるが、特例輸出貨物など一部の例外品は、この承認を要しない。
⑤ また、同第67条の4には、輸出の許可の取消しについて、以下のとおり規定されています。
特定輸出者、特定委託輸出者又は特定製造貨物輸出者は、特例輸出貨物が輸出されないこととなったことなどにより、輸出の許可を取り消して欲しい旨の申請ができる。
⑥ 最後に、同第67条の5で、特例輸出貨物の亡失等の届出は、次のとおり行うこととされています。
保税地域以外の場所にある特例輸出貨物を廃棄する場合や亡失した場合は、特例輸出貨物に係る特定輸出者、特定委託輸出者又は特定製造貨物は、その輸出許可をした税関長に届け出る必要がある。
本来、保税地域にある外国貨物を廃棄するとき(同第34条)や、亡失したとき(同第45条)は、当該保税地域の貨物管理者(保税蔵置場等の場合は被許可者)が、税関長にその旨の届出をしなければならないとされています。
このとき、輸出許可を受けた貨物以外の場合は、当該保税蔵置場の被許可者等に、その関税等の納税義務が生じる場合があります。
以上、述べて来たように、特例輸出貨物は、それ自体、明確な定義と取扱いの特殊性がありますので、しっかり理解しておく必要があります。
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