日本では、様々な法律や条例などで、商品の表示が義務付けられています。
なぜでしょうか。
購入する人にとって目的に応じた選択を可能にする、見た人に安心を与える、その商品を安全に、適切に使用してもらう、公正公平な競争(売買)を実現する、公共の利益・健全性を増大・向上させる、地球環境の積極的な保全を進める、などが理由としてあげられるでしょう。
表示のルールは多岐に亘り、詳細に及ぶ。
いずれにしろ、いろいろな目的に沿って、商品や容器包装に表示するべき事項が決められています。
私たち消費者にとって、毎日、スーパーやコンビニに並ぶ商品の表示を見て、目的に照らして自ら判断して購入し、食べ、飲み、使い、楽しみ、贈り、ストックする訳ですから、商品の表示はとても重要なことです。
それだけに、輸入される商品を含め、その表示のルールは非常に多く、かつ、細やかに決められています。
一方、外国で生産された商品は、それぞれの国でやはり表示の規制がなされるとしても、日本とは異なった法律、社会規範などや、歴史的な背景、或いは、宗教上のタブーなどに基づいた表示がなされています。
勿論、外国語のみでの表示は、多くの日本人には表示の意味をなしませんし、日本語であっても、日本の法令で定めた表示のルールに沿ってなくてはなりません。
今回は、輸入貨物の表示義務のうち、特に輸入通関の時点で適正でなければトラブルになりそうな表示について、若干、述べてみたいと思います。
飲食物は食品としての表示が必要。
初めに、食品表示法です。その概要などは、消費者庁のホームページやパンフレットなどで知ることができます。(→ 知っておきたい食品の表示(消費者庁))
食品表示法の対象となる輸入貨物は、生鮮食品、加工食品、食品添加物など、全ての飲食物です。
その中には、消費税の軽減税率の対象とはならない酒類も加工食品に含まれます。また、食品衛生法に規定する食品添加物も含まれます。
ちょっと横道に逸れますが、輸入される食品(酒類を除く。)には、そもそも、食品表示法に基づく食品等の表示がなければ、消費税率は軽減(10%→ 8%)されません。
軽減税率が適用される「飲食料品」については、2019年10月の税率改正の際に少し解説していますので、そちらをご覧ください。(→ 消費税を軽減税率で輸入するときに知っておくべきことは)
さて、人が経口摂取するものは、食品表示法の対象となる飲食物か、医薬品や医薬部外品等に分けられます。
医薬品や医薬部外品等は食品表示法の対象外で、次に述べる「医薬品医療機器等法」による表示の規制を受けます。
輸入される飲食物に特有の表示が「原産国名」と「輸入者の名称と所在地」です。
その他、加工食品の場合は、その名称、原材料名、添加物、内容量、消費期限(賞味期限)などを表示する必要があります。
特定保健用食品、いわゆる「特保」は、保健機能の表示ができます。
保険機能食品とも言うようですが、特保の他にも、栄養成分の機能表示ができる栄養機能食品や、食品そのものの「健康の維持や増進に役立つ」という機能を表示できる機能性表示食品があります。
医薬品的な効能効果の標ぼうは、無承認無許可医薬品等になるおそれがある。
ここで注意したいのが、その食品で表示する「機能」が、いわゆる「医薬品的な効能効果を標ぼうしているもの」とならないようにしなければならない、ということです。
医薬品医療機器等法(医薬品、医療器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)では、人が口から摂取する医薬品、医薬部外品、再生医療等製品について、製造の承認と販売業の許可を取得することを義務付けています。つまり、食品のつもりで輸入したものが、医薬品として「表示」されていた場合、「無承認無許可医薬品」となってしまう可能性があるということです。
例えば、
- 糖尿病の方に
- 高血圧の人に
- 動脈硬化の人に
- 胃・十二指腸潰瘍の予防に
- 腎障害をなおす
- ガンがよくなる
- 眼病の人のために
- 便秘がなおる
- 疲労回復、強精(強性)強壮、体力増強、食欲増進
- 老化防止、勉学能力を高める
- 回春、若返り、精力をつける
- 新陳代謝を盛んにする、内分泌機能を盛んにする
- 解毒機能を高める、心臓の働きを高める、血液を浄化する
- 病気に対する自然治癒能力が増す
- 胃腸の消化吸収を増す、健胃整腸、病中・病後に
- 延命○○、○○の精(不死源)、○○の精(不老源)、薬○○、不老長寿、百寿の精、漢方秘法、皇漢処方、和漢伝方、体質改善
- 健胃整腸で知られる○○○○を原料とし、これに有用成分を添加、相乗効果をもつ
などの表示は注意が必要とされています。
医薬品等とみなされると証明がなければ輸入できない。
こうした表示が、食品として輸入する商品の容器や取扱説明書などにされていると、栄養補給や健康維持等に関する表現と判断されない限り、医薬品や医薬部外品等とみなされまねません。
医薬品等とみなされると、輸入通関の際に、医薬品医療機器等法上の承認・許可の証明を求められます。
もちろん、その場合は、関税法第70条に基づいて、その証明がなされるまで、輸入の許可はされません。
医薬品的な効能効果を標ぼうするもの以外にも、アンプル形状など専ら医薬品的形状であるもの、用法用量が医薬品的であるものについては、医薬品等とみなされる恐れを助長します。
いずれにしろ、輸入契約の前に、現物の表示によって医薬品等にならないよう、十分注意することが重要です。
医薬品と食品の具体的な違いなどは、厚生労働省の「医薬品の範囲に関する基準」(→ こちら)をご参照してください。
今回は、食品表示法と医薬品医療機器等法に関わる表示についてみてみました。
次回以降で、輸入品の表示に関するその他のルールについて、もう少し触れてみたいと思います。
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