私たちは、例えば衣類を購入するとき、気になった商品があれば手に取って、第一印象で欲しいと思ったその後に、商品の包装やタグなどの表示から、まずブランド名で商品の良し悪しに当たりをつけ、サイズを確かめ、値段を見て損得をはかり、素材で着心地や耐久性などを検討します。
そして、やはり、日本製かどうか、外国製なら製造国(原産地)はどこかが重要な判断基準になるのではないでしょうか。
日本国内では、原産地表示に関する規制は、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)などの法律で実施されています。
国内では景品表示法で原産地表示が規制されている。
かつては「景表法」とも呼んでいました。
後に述べる関税法第71条とともに、両方ともマドリッド協定(虚偽又は誤認を生じさせる原産地表示の防止に関するマドリッド協定)が元で、根っこは同じだったと思います。
さて、景品表示法における原産地表示規制の内容は、消費者庁のホームページ(→ 商品の原産国に関する不当な表示)等で紹介されていますが、概ね、以下のような表示を「原産国に係る不当表示」としています。
一つは、日本製の商品に対して、外国の国名、地名、国旗、紋章など、外国のブランド、デザイナーの名称や商標を表示している場合や、文字による表示の全部又は主要部分を外国の文字で表示している場合です。
もう一つは、外国製の商品に対しても、同様に、その国以外の国の国名や地名、その国以外の国のブランドなどを表示しているとか、和文だけで表示している場合です。
これらは不当表示に当たるとしています。ただ、この内容では、今一つ明確ではないので、業界団体単位などで、もう少し詳しい基準を設けているようです。
また、ここに言う「原産国」とは、その商品について「実質的な変更をもたらす行為が行われた国」としていますが、「実質的な変更」がどういった変更かは、緑茶や清涼飲料、織物、腕時計など一部の商品を除いて、あまり明確ではありません(→ 「商品の原産国に関する不当な表示」の原産国の定義に関する運用細則)
景品表示法では、不当表示行為について、行為者に是正させる等の措置命令ができるとされています。
輸入申告貨物は、関税法で規制されている。
一方、輸入通関時の貨物の原産地表示については、関税法第71条において、直接又は間接に、偽った表示(虚偽表示)又は誤認を生じさせる表示(誤認表示)がされている外国貨物は輸入を許可しない、とされています。
また、原産地の虚偽表示又は誤認表示がされている貨物は、指定された期間内に、輸入者の選択により、当該表示を抹消するか、訂正するか、又は貨物自体を積み戻さなければならないとされていますが、特に罰則がある訳ではありません。
輸入郵便物についても、関税法第78条により、原産地の虚偽表示又は誤認表示がされている郵便物については、名宛人が当該表示を抹消又は訂正しない限り、郵便局は配達できません。
もう一つ、関税法上は、原産地を偽った表示又は誤認を生じさせる表示がなければ、原則として、原産地の表示がない貨物でも輸入許可されます。従って、この点は誤解されがちなことですが、原産地の表示のない貨物を輸入した後で、日本の市場に出す段階で、景品表示法等に基づく原産地の表示が必要になる、ということはあり得ます。
関税法上の原産地は、項の変更をした国を基準(原則)としている。
さて、関税法でいうところの「原産地」とは、原則として、その国の「完全生産品」か「実質的な変更を加える加工又は製造をした国(地域)」です。
そして、この場合の「実質的な変更」とは、「関税率表(HS)の項(4桁)の変更を伴う加工又は製造」とされています。(関税法基本通達71-3-1、関税法施行令第4条の2第4項及び同施行規則第1条の6及び第1条の7)
また、単なる、部分品の組立てなどは、基本的に「加工又は製造」から除かれますが、その行為に着目して、「assembled in 〇〇」などの表示をすることで輸入が認められる場合もあります。
問題は、「誤認を生じさせる」とはどういうことか、ということです。「虚偽の原産地が明白に表示されていなくとも、一般的、客観的に見て原産地の誤認を生じさせるような表示」と、やや分かりにくい表現がされていますが、関税法基本通達において、もう少し細かい運用面での基準が示されています。
なお、この関税法上の原産地と例えば食品表示法上の原産地が違っている場合は、その表示が食品表示法上適法であれば、関税法上の虚偽表示等には該当しないこととされています。
次に、輸入品に関する原産地表示では、不正競争防止法も大いに関係してきます。
不正競争防止法でも、原産地の誤認表示は厳しく規制されている。
不正競争防止法第2条第1項第20号において、商品等に、その商品の原産地等について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為等を「不正競争」行為としています。
かつ、こうした不正競争行為については損害賠償請求や刑事罰の対象としているので、十分な注意が必要です(→ 偽装表示の防止と不正競争防止法パフレット)。
また、原産地等の表示とは少し離れますが、不正競争防止法における「不正競争」行為のうち、
- 他人の商号、商標等の表示として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の商品等の表示を使用して、他人の商品等と混同を生じさせる行為に係る貨物
- 自己の商品等の表示として他人の著名な商品等の表示と同一又は類似のものを使用等する行為に係る貨物
- 他人の商品の形態を模倣した商品(貨物)
- 営業秘密に係る不正行為により生じた商品(貨物)
は、関税法第69条の11に規定する「輸入してはならない貨物」ですから、これらを不正輸入した場合は、懲役や罰金といった結構重い刑罰の対象となっています。
今回は、景品表示法と関税法、不正競争防止法に係る原産地表示のお話を、少しご紹介しました。
しかし、これらの法令の他にも、
- 地理的表示(知的財産権)
- 輸出入取引法(輸出貨物の原産地虚偽表示貨物)
- 外為法(輸出貿易管理令別表第2、原産地を誤認させるべき貨物
でも、原産地の虚偽表示や、誤認を生じさせる表示がされている貨物の輸出入は厳格に規制されています。
ご興味のある方は、それぞれの法令等をご参照ください。
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(最終更新:2021.3.15)
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