春節の影響は貿易統計に現れることがある
2019年3月に、名古屋税関調査部調査統計課による2019年2月分の管内貿易統計の発表の際に、中国の春節の影響に係る説明がありました。
その内容は、2019年2月分の中国からの名古屋税関管内の輸入額が、全体で対前年比でマイナス(▲)19.0%(11か月ぶりの減少)であって、特に「衣類及び同附属品」の輸入が、対前年比▲26.6%と大幅に減少したが、その原因の一つとして、春節の時期が前年とずれたことによる「月ブレ」があげられる、というものです。
春節は人が動き、貨物が止まる、のが通例
少し詳しく言うと、2018年の中国の春節による連休期間は2018年2月16日~2月21日であった。この間、中国では、人の大移動が生じる一方、モノの生産と国内・国際物流が全部止まってしまう。だから、中国国内の縫製工場等は、春節による休業に入る前、2月前半に稼働し貨物を全部送り出していたので、その輸入分は2月の統計に反映された。
しかし、2019年の春節による連休期間は2019年2月4日から2月10日だった。このため、中国国内の縫製工場等は、その生産と物流が止まってしまう前、1月の下旬に稼働し、貨物を送り出していたので、その輸入分は1月の統計に計上された。
だから、2019年2月分の貿易統計には、米中の貿易摩擦による中国の景気減速等もあろうが、同国内の春節の影響による単なる「月ブレ」も考慮する必要があるということです。
春節の連休期間は年により異なる
その証の一つとして、1月と2月分の合計で比較すると、中国からの名古屋税関管内の輸入額は、対前年同期比で▲2.3%であった、ということでした。単月分と比べると、減少率が相当違います。分かりやすい説明ですね。
ちなみに、中国向け輸出額で比較すると、2月単月分では、自動車の輸出等が増加して、対前年同期比プラス(+)11.3%でしたが、1月と2月分合計では▲3.3%とのことでした。
輸出への影響もありそうです。
2020年1、2月分の貿易統計から春節の▲を調整してみないと
では、2020年は、どうか。今年の春節の連休期間は、当初の予定では1月24日から1月30日まででした。
つまり、今年は昨年と異なり、1月に工場が1週間止まりました。 中国の春節の影響としては、 その分の▲が1月分の貿易統計にほぼ純粋に反映された「月ブレ」が出ることが予想されます。
そして、ご承知の様に、2020年2月半ばの現時点では、春節が開けても Covid 19 により、中国の生産体制は一部地域で止まったまま過ぎて来ています。
ということは、今年と昨年の2月単月分の貿易統計数値を比べて、1月分の月ブレ▲を足してみなければ、その数量と金額に、今の病禍の純粋な傷痕を見ることができないかもしれません。
だから、2020年も、貿易統計の1月分と2月分を足してみないと、Covid 19 の影響を見ることは難しいかもしれない、ということになります。
貿易統計は面白い
2020年全国分の貿易統計は、1月分が2月19日に、2月分が3月18日に予定されています。名古屋税関を含む各地の管内、港(官署)別の統計発表は概ね全国分の後に発表になります。
いずれも、税関ホームページ(全国分→ こちら)から、誰でも見ることができます。
貿易統計は、品目(HS9桁ベース)別、貿易相手先の国(地域)別に、輸出入の数量と金額を細かく知ることができます。また、自動車部品とか工作機械など、概況品で品物を括れば、大まかな品目毎に比較が可能です。
その比較によって、前年同期比、輸出入先国別の比較、港別の比較、単価の比較等が可能です。
米中の貿易措置の累次のタイミングや、EPA発効の前後の比較、その時の地域別の比較など、お時間のあるときに、じっくり分析されることをお勧めします。
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