延滞税という言葉は、あまり馴染みがないかもしれません。
まあ、その方が良いとは言えます。当初の納税が少な過ぎた場合に、後から不足分を収める税金の額に合わせて、利息として追加される税だからです。
今回は、この延滞税のお話です。
新型コロナウイルス禍で、企業が時間短縮になると。
今、再び、新型コロナウイルス感染症の猛威が吹き荒れています。東京を含む近郊の1都3県に始まった非常事態宣言は、中部、関西の主要都市から福岡まで拡大し、まだその対象地域は広がる気配を見せています。
時間に関係なく不要不急の外出等を自粛することでパンデミックによる社会的負荷を減らせるのなら、まず、大企業などテレワークが可能な企業は率先して在宅勤務を速やかに進めるべきだと思います。
また、そのことが非正規雇用を含む従業員の健康と安全、企業活動の持続につながり、その動きが拡大することで、日本社会全体の経済的、財政的、社会的な危機の克服につながり、今後の日本経済の回復にもなると考えます。
そうすると、勿論、国の機関やその他の公的機関などは、いわゆるエッセンシャルワーカーに該当する人員を除き、在宅勤務やテレワークのためのシフト体制を構築して、結果的には、行政行為が可能な範囲で活動を縮小することになります。
税関も人員を減らすことになる。
よって、全国の税関も、日々の輸出入通関や検査等に対して、最小人数の体制を整えることになるでしょう。
不正薬物等の密輸を監視し、関税等の適正な確保等を通じて日本社会の安全と安定に寄与しなければならない中で、そのバランスのあり方が問われることになります。
税関の事後調査は、輸入者のもとに出向いて、過去の輸入申告が正しかったかどうかを調査するものです。
個別の輸入許可に関する法定台帳や保管書類を実際に目で確認して、例えば別払いの有無などをチェックし、その結果に応じて、納税額が不足していたと判断された場合は、輸入者に修正申告等を求めることとなります。
税関の事後調査も延期や取止めになるかもしれない。
この事後調査の業務も、今般の非常事態宣言によって、延期や中止が増加することが予想されます。
一般的に、事後調査は、毎年7月から翌6月までを1事務年度として、各税関に割り当てられた輸入者の中から、過去の事後調査の頻度、その非違の状況、輸入通関の内容、現場からの情報等を綿密に検討したうえで、対象を絞り込んで実施されます。
税関の事後調査担当部門の人数は限られているので、これから1,2か月の間、調査を控えることになった場合、結果として今事務年度の調査件数が減少し、本当は調査を受けるかも知れなかった輸入者で、調査が先送りになるとか、取り止めになるところが出てくるでしょう。
でも、関税の徴収権は、原則として5年で消滅する。
さて、故意に関税・消費税を免れる行為、つまり脱税行為をしていない限り、関税の徴収権は、輸入の許可を受けてから5年を過ぎると消滅します。
言い換えると、5年以上前に行った輸入申告で、いかに多額の納税漏れがあろうと、それが犯則行為でない限り、税関は修正申告を求めることができないということです。
よって、税関の事後調査も、調査実施日の前の概ね5年間の輸入実績について調査を行う場合が多いと思います。
一方、貿易を業としておられる方でも、輸入通関の際の納税に関する実務は、初めのうち不慣れなこともあって誤りが生じ易いと思います。
通関業者に依頼していても、仲介業者への別払いがあったとか、前の取引のクレーム分を相殺していたとか、輸入貨物を製造するための金型を無償で提供していたなどということは、通関業者に伝えなければ分からない事柄です。
つまり、事後調査の実施が延期になるということは、今より5年前を振り返って、どうも自信がないという輸入者の場合は、ちょっと得をするということになるかもしれない、ということです。
延滞税は5年間分を払うことになるのだろうか。
税関の事後調査で、輸入時の関税や消費税の納付不足が見つかって、その修正申告をしなければならいというとき、その不足する関税や消費税の税額を追加で納付することとなりますが、加えて、その輸入許可の日から、修正申告の日までの日数に応じて延滞税がかかります。
関税法第12条(→ こちら)においては、延滞税の率は、年7.3%と規定されています。
ちなみに、仮にその修正申告した関税を、すぐに納付せず2か月以上経った場合は、その経た後の延滞税率の割合が、年14.6%と倍増することになっています。
今の超低金利の時代に、少々お高い利率だと思いませんか。
仮に、この利率で、5年分徴収されると考えると、かなりインパクトのある額になりそうです。
でも、現実には、そんなに無慈悲なことにはならない仕掛けになっています。
延滞税は意外に少ない(少なくない?)
一つは、期間計算です。輸入許可の後、1年を過ぎた後の期間は算入しないことになっています。つまり、5年前の輸入でも、最初の1年間分の延滞税だけでよい、ということです。
次に税率です。法律の規定は上のようになっていますが、やはりこの超低金利の時代に相応しい率ではないということで、関税法附則において、「一般の銀行が新規、短期で貸し出す際の金利の年間平均利率 +1%」を基準にして算出することになっています。
この計算式によれば、令和3年(1月1日~)の延滞税率は 年2.5%となり、修正申告後に更に2か月を経た後の延滞税率も 年8.8%となります。
意外に少なくなるのです。
それでも、お安くない? そうかも知れません。
でも、元を質せば、税関が輸入貨物に課す関税や消費税は税金ですから、重要な歳入として国庫に入ったあと、日本国民全員の社会保障費などに使われるものです。
また、今は、新型コロナウイルス対策としての雇用調整助成金や持続化給付金、飲食店当への協力金などにも使われる大事な財源です。
それが不足していたのであれば、その分の金利として、この程度の延滞税は仕方がないと考えるか、少な過ぎると考えるか、いかがでしょうか。
当事務所は、税関の事後調査の対応についても、お役に立てると思います。詳しくは当サイト紹介ページ(→ こちら)をご覧ください。
(最終更新:2021年1月19日)
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