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AEO認定事業者

特例申告貨物を輸入するときの申告書への「付記」と「記載」の関係

私は、通関士試験を目指す方向けのセミナーの講師を担うことがあります。また、そのときに、受講者から様々なご質問を受けます。

どの様な質問があるのか、どの様に答えたかを、当ブログでご紹介し、通関士試験を目指す方に、少しだけ、「勉強の方向性」とか、「勉強のやり方」の様なものをお考えいただければと思います。

通関士試験を目指す人の質問に答えて ③

〔質問:関税の減免がある特例申告の場合、輸入申告書か特例申告書か、結局、どちらに記載するのか。〕

関税の減免税がある場合の特例申告について、「輸入申告書」に関税の軽減を受けようとする旨を付記する場合と、「特例申告書」に軽減、免除を受けたい旨を記載する場合がありますが、結局、特例申告書と輸入申告書、どちらに記載するのが正しいのでしょうか?

〔回答:特例申告貨物に関する「記載する」と「付記する」の違いに着目する。〕

ご質問をありがとうございます。

この、特に特例申告貨物に関する「記載する」と「付記する」の違いに着目されたのは、大変良いことだと思います。

まず、関税法第7条の2「申告の特例」は、納税申告の特例であって、特例申告以外の場合は、納税申告を輸入申告と同時に行うことが基本ですね。(⇒ 関税法第7条第2項

一方、特例輸入貨物であっても、納税申告の前に、関税法第67条に基づく輸入申告(=輸入貨物の引取りの申告)をして貨物を引き取る必要があります。

つまり、特例輸入者は、「輸入申告書」で貨物を引き取った後、別途、「特例申告書」をもって納税申告を行うので、この「輸入申告書」(=引取りの申告書)には、念のため、減免税貨物であることを「付記」して、税関の審査の参考にしてもらうこととし、「特例申告書」(=納税の申告書)には、減免税申告をする必要上、その旨を「記載」するのであると、理解されてはいかがでしょうか。

根拠法令として、関税法施行令第4条の2(⇒ 関税法施行令)をご確認ください。

この条文の、第1項本文に、特例申告書には、次に掲げる事項を「記載しなければならない」とあって、第6号に、「関税の軽減、免除又は・・・には、その適用を受けたい旨及びその適用を受けようとする法令の条項」とあります。

納税申告の審査に必要な事項、つまり原産地や、税番、税率などと横並びは同じです。

また、「付記」については、

例えば、関税定率法第11条(加工、修繕貨物の減税)(⇒ 関税定率法)の適用を受けて、輸入の貨物の減税を受けようとする場合、関税定率法施行令第5条の2第2項(⇒ 関税定率法施行令)において、「特例輸入貨物について・・関税の軽減を受けようとする者は・・輸入申告書に・・受けようとする旨を付記しなければならない」と規定されています。

他の減免税制度についても、特例申告貨物に係る輸入申告書への「付記」については、同様の規定ぶりとなっているものがいくつかあります。ご確認ください。

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〔回答の補足:特例申告貨物の輸入申告書に「付記」を必要とする制度は多くない〕

特例輸入貨物は、特例輸入者(AEO認定事業者=コンプライアンス等が特に優れているとして、税関長から認定を受けた輸出入者、通関業者、保税事業者等)が、輸入申告と納税申告とを分離して輸入する貨物です。

具体的には、貨物の輸入時に、輸入(引取)申告を行い、その許可を受けて貨物を引き取った後、期限までに特例申告書(納税申告書)を提出して納税手続を行うことができます。

その際、輸入(引取)申告においては、他法令に係る許可・承認書等の提出は要するものの、原則として、インボイス、保険料明細書等の書類の提出は不要とされています。

また、納税に係る申告項目(課税標準、税額等)は入力不要であり、納税のための審査・検査は基本的に省略されます。

今回の、「付記」と「記載」を分けて理解するには、この点がポイントとなります。

さらに、特例申告書の提出は、輸入許可を受けた日の属する月の翌月末日を期限とし、個別の輸入許可毎に、或いは当月分をまとめて行うことができます。

特例申告書への「記載」の条文は関税法施行令

では、まず、その特例申告書の記載事項等について、関税法施行令の規定を見てみましょう。

関税法施行令第4条の2第1項第6号の規定により、特例申告書には、次に掲げる事項を「記載」しなければなりません

定率法その他の関税に関する法令の規定により関税の軽減、免除又は控除を受けようとする場合には、その適用を受けたい旨及びその適用を受けようとする法令の条項

輸入(引取)申告書への「付記」の条文は、減免税の根拠法令(政令)

では、次に、「付記」の規定を見ていきます。

特例輸入貨物について、関税の減免税を受けたい場合に、輸入(引取)申告書にその旨を「付記」する、との文言は、以下の七つの条文に見られます。

また、これらの場合、納税申告(特例申告書の提出)の時ではなく、税関が現物確認を行い得る時(引取りの時)に、減免税の要件の確認や判断をするという点が共通しているように思います。

例えば、変質・損傷減税の適用を受ける場合は、輸入(引取)申告の際には、その変質又は損傷の実態を確認すること、及び添付書類等との整合性の審査を行うことが必要とされています。

① 変質又は損傷による減税の手続き(関税定率法施行令第3条第2項)

輸入申告等の時までに変質し、又は損傷した特例申告貨物について、関税定率法第10条の規定により関税の軽減を受けようとする者は、当該特例申告貨物の輸入申告書に、当該特例申告貨物について同項の規定により関税の軽減を受けようとする旨を付記しなければならない。

関税定率法第10条の災害等による価値の減少に伴う変質・損傷減税においては、従価税品は関税評価で基本的にカバーできますので、主に重量税品である場合を想定していると考える方が良いかもしれませんね。

② 加工又は修繕のため輸出された貨物の減税の手続(関税定率法施行令第5条の2第2項)

特例申告貨物について関税定率法第11条の規定により関税の軽減を受けようとする者は、当該特例申告貨物の輸入申告書に、当該特例申告貨物について同条の規定により関税の軽減を受けようとする旨を付記しなければならない。

この場合は、普通、加工・修繕貨物の減税の適用を受ける貨物の輸入(引取)申告の際に、税関の貨物確認が行われて、その加工又は修繕の状況の把握と、輸出貨物との整合性のチェックがなされるものと思われます。

③ 注文の取集めのための見本の輸入に係る免税の手続き(関税定率法第13条の4)

関税定率法第14条第6号(無条件免税)の規定により関税の免除を受けようとする者は、当該特例申告貨物の輸入申告書に、当該特例申告貨物について同号の規定により関税の免除を受けようとする旨を付記しなければならない。

特に、「商品見本」に係る免税の適用を受ける場合は、輸入(引取)申告の際に、税関の貨物確認により、その貨物が当該見本の要件にあたるか否か等の確認を容易にするための措置が必要になると思われます。

④ 再輸入免税貨物の輸入の手続(関税定率法施行令第16条第3項)

特例申告貨物について関税定率法第14条第10号、第11号(貨物の運送のために反復して使用されるものに係る場合を除く。)又は第14号の規定により関税の免除を受けようとする者は、当該特例申告貨物の輸入申告書に、当該特例申告貨物についてこれらの規定により関税の免除を受けようとする旨を付記しなければならない。

⑤ 再輸入減税貨物の輸入の手続(関税定率法施行令第16条の5第2項)

特例申告貨物について関税定率法第14の2の規定により関税の軽減を受けようとする者は、当該特例申告貨物の輸入申告書に、当該特例申告貨物について同条の規定により関税の軽減を受けようとする旨を付記しなければならない。

④と⑤については、特に、再輸入免税又は再輸入減税の適用を受ける場合は、輸入(引取)申告の際に、「本邦から輸出又は積戻しされたものが、その性質、形状を変えることなく再輸入されたものか否か」等の確認が必要と考えられます。

⑥ 再輸出貨物の免税の手続(関税定率法施行令第34条第2項)

特例申告貨物について関税定率法第17条第1項の規定により関税の免除を受けようとする者は、当該特例申告貨物の輸入申告書に、当該特例申告貨物について同項の規定により関税の免除を受けようとする旨を付記しなければならない。

特に、再輸出免税の適用を受ける貨物は、輸入(引取)申告の際に、その貨物の「輸入の際の性質、形状等」を把握しておき、再輸出される際の貨物確認を容易にするための措置が必要と考えられます。

⑦ 加工又は組立てに係る製品の減税の手続(関税暫定措置法施行令第23条第4項)

特例申告貨物について関税暫定措置法第8条の規定により関税の軽減を受けようとする者は、当該貨物の輸入申告書に、当該貨物について同条の規定により関税の軽減を受けようとする旨を付記しなければならない。

最後に、加工再輸入減税の適用を受ける場合は、輸入(引取)申告の際に、税関の貨物確認により、その貨物が原材料として輸出された貨物が加工されたものであるとの確認を必要とする場合が考えられます。

以上、述べて来たように、関税定率法や関税暫定措置法等に規定される全ての減免税貨物について、特例申告貨物を輸入する場合の輸入申告書への「付記」が必要というものではありません。

その違いがどこにあるのか、筆者にも定かではありませんが、とにかく、そういう手続きが必要なものがあることを覚えておきましょう。

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  1. 特例輸出貨物と特定輸出貨物は、何が違うのか。
  2. 関税法第4条(課税物件の確定の時)の理解について
  3. 輸入の予備申告と通関士試験
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