COVID-19の終息はなかなか見えてきませんが、今年の初め頃に、世界の工場たる中国を中心とした生産現場の混乱で、サプライチェーンの見直しをされた企業も多いと思います。
そして、既に、今年も10月に入りました。
サプライチェーン見直しは中間評価を。
その間、様々な検討をし、何かの結論を得て、そして様々な試みを経て、そろそろ、自社のサプライチェーン見直しの中間評価の頃かもしれません。
その中で、現在の取組みに関する新たな問題点や課題も見えてきたところでしょうか。
「生産拠点の国内回帰」は、COVID-19の影響を踏まえた日本政府の政策にも合致しています。先の補正予算においても、2,400億円規模が割り当てられています。
本日は、その一つの解として、「保税工場」をご紹介したいと思います。
関税法上の保税地域には、保税工場のほかに、指定保税地域、保税蔵置場、保税展示場、そして総合保税地域といった種類があります。
もちろん、それぞれ保税制度の中での機能や役割、メリット等が異なりますので、その機能等に応じた利用をすれば、保税上のメリットも最大限に享受できます。(→ 税関ホームページ)
保税工場は、外国から原料(外国貨物)を日本に持ってきて、国内で加工し、できた製品(外国貨物)を外国にもって行く制度です。
保税工場の目的は貿易の振興にある。
保税工場の役割は、本来、「加工貿易の振興」にあります。
現状においても、保税工場では様々な原材料を用いて、様々な製品を作り、外国に積戻しされています、先ほどの税関ホームページには、その例として、魚介類の缶詰、菓子、鋼材、電線、船舶、自動車、精密機械、土木機械、工作機械、石油製品、繊維、農薬、化学製品、フィルムがあげられています。
この場合、関税法上は「輸入」ではなく、「移入れ(うつしいれ)」と言います。外国へもっていくことも、輸出ではなく、「積戻し(つみもどし)」と言います。
関税も消費税もかからない。
つまり、外国産の原料や素材、部品等を国内の工場にいれることは「輸入」ではないので、国内にあっても外国貨物のままであり、移入れの際に関税や消費税がかかりません。
また、原料等を移入れしてから、加工して製品を積み戻すまでの期間は、原則として2年間です。延長も可能です。
つまり、その間に、原料のまま置くことも、製品の商機を見ることも、製造量の調整も可能です。もちろん、その時々の状況によって、これらの原材料や製品は日本国内に引き取ることもできます。
原材料の関税率が有税であれば、製品を国内に引き取る場合でも、原材料を輸入するものとみなして関税を納付します。その時に消費税も納付します。
つまり、消費税も、国内に引き取る場合以外は払う必要がありません。当然といえば当然ですけど。
輸出貨物の消費税還付の手続きが不要。
例えば、日本でできた製品、商品を輸出する場合は、毎期末に消費税の輸出免税申告をして、その分の消費税を還付してもらう手続きが必要です。でも、保税工場なら、その必要はありません。
社内の誰かが還付申請の手続きを忘れてしまうという心配もありません。
サプライチェーンの見直しをするなら、最初から消費税(課税価格と関税の合計額の10%)を全く考慮しなくてよい、この保税工場制度の利用も視野に入れていただきたいと思います。
保管、輸送、仕分けにも消費税がかからない。
その他、忘れてはならないのが、保税工場自体の消費税制上のメリットです。
原材料も保税製品も、いずれも外国貨物なので、保管や運送、荷捌き、仕分け等の取扱い作業を外注するとか、下請企業や協力企業に委託した場合でも、やはり消費税はかかりません。
保税工場制度には、デメリットもあります。その一つは、許可手数料です。
保税工場は、その加工を行う工場の施設や設備全部でなくとも、保税加工を行う場所だけ許可を受けることができますが、その広さに応じて、毎月、手数料を税関に収める必要があります。例えば、広さが1万㎡から2万㎡であれば、月に21,800円です。
また、保税工場であるためには、原材料から保税製品に至るまでの歩留まりを税関に認めてもらう必要があります。また、貨物管理体制を整えること、教育や内部監査をきちんと行うこと、施設設備の変更、追加等があれば、その都度報告することなども求められます。
対外的信用が高まり、社内の士気も高まる。
ただ、この辺りのことは、あなたの工場の生産体制や加工作業の手順がきちんと整っており、常に適正な工程で製造が行われることを税関から認められた工場であるという、一種の認証制度のようなものだと考えることもできます。
その点を社の内外にアピールすることで、社会的な信頼性が高まり、従業員の士気も高められる、と言えると思います。
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