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輸入手続

他法令の証明は、申告の時か、審査・検査の時か

前回のブログで、「予備申告」の説明をした際に、そのメリットの一つが、予備申告中に他法令手続を同時並行して行えることだと説明しましたが、そもそも、税関への他法令の証明をいつまでにすべきかが分かってないと、この理解は難しいかもしれません。

その辺りは、関税法上の手続きの中でとても重要であるにも関わらず、ややわかり難い仕組みになっているので、今回、少し丁寧に確認しておきたいと思います。

証明が必要な他法令には二つのジャンルがある

まず、税関に他法令の証明をしなければならない根拠として、関税法第70条の条文を確認しておきます。

内容は実に簡単な条文ですが、以下、少しだけ読みやすくして掲載します。

関税法第70条第1項↓

「他の法令の規定により、輸出又は輸入に関して、許可、承認その他の行政機関の処分又はこれに準ずるもの(=「許可、承認等」)を必要とする貨物については、輸出申告又は輸入申告の際に、この『許可、承認等』を受けている旨を税関に証明しなければならない。」

関税法第70条第2項↓

「他の法令の規定により、輸出又は輸入に関して、『検査又は条件の具備』を必要とする貨物については、輸出申告又は輸入申告に係る税関の審査、検査の際、当該他法令の規定による『検査の完了又は条件の具備』を税関に証明し、その確認を受けなければならない。」

つまり、税関に証明を要する他法令には、「許可、承認等」を要するもの(=第1ジャンル)と、「検査の完了又は条件の具備」を要するもの(=第2ジャンル)の、二つがあるということです。

ついでに、同第70条第3項は、↓

「第1項の証明がされず、又は第2項の確認を受けられない貨物については、輸出又は輸入を許可しない。」と規定されています。

bookcase- Jorg Moller, Pixabay 335849_1920

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第1ジャンルは申告の時に証明が必要

この規定で分かるように、第1ジャンルの貨物は、関税法以外の法令で、輸出又は輸入の許可や承認が必要というものです。

例えば、現在、ハイスペックな機械をロシア向けに輸出する場合は、輸出貿易管理令(外為法)によって、経済産業大臣の輸出の許可を受けることが必要です。しかも、特別な事情がなければ、その輸出は許可されない可能性が高いでしょう(→「ウクライナに侵攻したロシア等への制裁まとめ」)。

このように第1ジャンルに該当する貨物は、その法令で厳格に規制されているものです。

このため、そもそも輸出入が可能かどうか分かった状態でないと、税関への輸入申告は受け付けられません。

従って、税関への申告の時に、当該他法令に係る許可等の証明書を添付しなければならないのです。

第2ジャンルは審査、検査の際に確認を受ける

第2ジャンルの貨物は、関税以外の法令の規定によって、輸出や輸入をするための基準や条件が定められているとか、その条件等を満たしているか否かについて、所管省庁が定める検査を受ける義務があるという貨物です。

勿論、この条件を満たさないとか、指定された検査を受けなかった場合は、輸出や輸入が認められないことになるでしょう。

例えば、陶磁器製の食器等については、食品衛生法の規制に基づき、カドミウムや鉛の含有量が基準を超える場合は、国内販売用として輸入できません(→液体深さ2.5cm以上のガラス・陶磁器製品等の規格、大阪検疫所食品監視課)。

このように、貨物の種類自体は輸出や輸入が禁止されているとか、承認が必要なものではなく、一定の基準を満たす必要がある、というものです。

つまり、第2ジャンルの貨物の場合は、輸出入者は、自らその条件に合ったものを輸出入するものであって、税関への申告後も、その条件を守っていくと考えられます。

そのため、税関の審査又は検査の際に、言い換えると、税関の輸出入の許可までに、その『条件の具備や検査を受けた』旨を証明し、税関の確認を受ければよいこととしています。

museum-of-science-and-technology-Dimitris Vetsikas, Pixabay 3601470_1280

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輸出に係る他法令は15法令

関税法第70条の対象となる輸出に関する他法令の具体的な内容は、同基本通達70-1-1(→ こちら)の別表1、2に掲げられています。第1ジャンルが12法令、第2ジャンルは2法令です。

◎ 輸出の第1ジャンル(別表1、法令名のみ)

  1. 外国為替及び外国貿易法(輸出貿易管理令、外国為替令)
  2. 輸出入取引法
  3. 文化財保護法
  4. 林業種苗法
  5. 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(=鳥獣保護法)
  6. 大麻取締法
  7. 覚醒剤取締法
  8. 麻薬及び向精神薬取締法
  9. あへん法
  10. 特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律
  11. 植物防疫法
  12. 狂犬病予防法
  13. 家畜伝染病予防法

◎ 輸出の第2ジャンル(別表2、法令名のみ)

  1. 麻薬及び向精神薬取締法
  2. 道路運送車両法

輸入に係る他法令は33法令

同様に、輸入に関する他法令の具体的な内容は、関税法基本通達70-3-1(→ こちら)の別表に掲げられています。第1ジャンルが24法令、第2ジャンルは8法令ですが、品目によっては、この両方に該当する場合があります。

◎ 輸入の第1ジャンル(別表1、法令名のみ)

  1. 外国為替及び外国貿易法(輸入貿易管理令、外国為替令)
  2. 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(=鳥獣保護法)
  3. 銃砲刀剣類所持等取締法(=銃刀法)
  4. 印紙等模造取締法
  5. 大麻取締法
  6. 毒物及び劇物取締法
  7. 覚醒剤取締法
  8. 麻薬及び向精神薬取締法
  9. あへん法
  10. 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(=薬機法、医薬品医療機器等法 ⇒ 動物用医薬品等、指定薬物)
  11. 肥料の品質の確保等に関する法律
  12. 水産資源保護法
  13. 砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律
  14. 畜産経営の安定に関する法律
  15. 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律
  16. 火薬類取締法
  17. 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(=化審法)
  18. 郵便切手類模造等取締法
  19. アルコール事業法
  20. 石油の備蓄の確保等に関する法律
  21. 農薬取締法
  22. 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律
  23. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
  24. 労働安全衛生法(⇒ 黄りんマッチなどの有害物、アスベスト製品)
  25. 特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律

◎ 輸入の第2ジャンル(別表2、法令名のみ)

  1. 食品衛生法
  2. 植物防疫法
  3. 狂犬病予防法
  4. 家畜伝染病予防法
  5. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
  6. 高圧ガス保安法
  7. 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(⇒ 動物用医薬品等以外の医薬品等)
  8. 労働安全衛生法(⇒ アスベストを含むバスマットなど)

だが、実質的には、他法令のジャンルは一つ

ここまで見て来てお分かりの様に、輸出又は輸入の他法令手続の証明は、輸入申告の時に間に合わなくても良いものがあります。

しかし、実際には、そういう他法令に該当するものでも、通関業者から、輸出入申告の時までに証明書を用意するように言われることが多いのではないかと思います。

これは、今の輸出入手続が、NACCSという通関システムで行われており、申告と同時に許可になるケースが多いということや、万一、申告してから許可までに、当該『他法令上の条件の具備等』が得られなかった場合は、申告撤回という面倒な手続きが待っていることなどが理由としてあげられます。

さらに、万に一つ、他法令上の手続きが未済のまま輸出や輸入が許可になってしまった場合は大問題に発展します。輸出入者は信用を失墜し、所管省庁への謝罪と説明、公表、マスコミ対応、商品の回収、消費者への補償など、多大な損失を被ることになりかねません。

つまり、他法令にはジャンルが二つありますが、実質的には一つ、というのが、私なりの結論です。

ここまで引っ張ってきて結論がそれか、と思われたかもしれません。どうぞお許しください。

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(最終更新:2023年4月13日)

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