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貿易実務

取引価格を理解することから始めよう。

外国からモノを輸入しようとすると、大抵の場合、税関で税金を払う必要があります。

その場合の税金は、関税の場合もありますが、消費税や酒税といった関税以外の税金である場合も多いです。

当たり前ですが、その消費税も、やはり輸入時の申告価格が計算の基礎となります。

従量税品しかなくとも申告価格が正しくなければ修正申告が必要

日本の関税率は、多くの品目で「無税」が設定されているので、そういうことになる訳ですが、関税率が有税の場合、「%」で設定されているものを「従価税品」と言います。

また、その貨物の輸入申告価格を「課税価格(Customs Value)」ということは前回お話しました。

関税率が「量」に対して設定されているものを「従量税品」と言います。

例えば、フランス産のシャンパン(スパークリングワイン)(輸入統計品目番号:2204.10-000)は、いくら高い品物であろうと、関税率は「1リットル当たり182円」です。

一方、輸入貨物の消費税の額は、「申告価格 + 関税の額+消費税以外の内国消費税の額」(千円未満切捨て)を「課税標準」として、地方消費税と合わせて10%か 8%を掛けて計算されます。

つまり、従価税品であるか従量税品であるかに関係なく、輸入時に、いい加減な価格で申告すると、低価申告(Undervalue)になって、後で修正申告を求められ、消費税を追加納付することになるかもしれないということです。

だから、従量税品しか輸入しない企業であっても、関税評価(Customs Valuation)の知識は必要ということですね。

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関税評価の中の「原則的な方法」

前回、関税評価とは、「税関への申告価格(Customs Value)を算出するルール」だと申し上げました。

このルールには、「原則的な方法」と「原則によれない場合の方法」の大きく2通りがあります。

今回は、この「原則的な方法」を概括したいと思いますが、これを説明するためには、この「原則的によれない場合」を、まず知る必要があります。

一つ目は、その貨物が輸入取引されたものでない場合です。

例えば、買手も知らないうちに、取引先がサービスで商品に同梱してくれて、インボイスにも載っている「無償の見本」などがこれに該当します。

二つ目が、その取引価格の決定に関して「特別の事情」がある場合です。

例えば、輸入後3か月間は展示用として使うことが条件になっているもの、などがこれに当たります。また、売手と買手の間に親子関係や資本関係などがあって、その関係がインボイス価格に影響を与えている場合、或いは、影響がないことを証明できない場合などです。

三つ目は、申告価格が正しくないのではないかと税関職員が疑念を抱いて、これを払拭できない場合です。

言い換えると、商品を輸入する場合に、その取引が「輸入取引」であって、売手による輸入後の使用上の制限などがなく、売手と買手との間に特殊関係がない、又はその影響がないことが証明できる場合は、概ね、「原則的な方法」によって、課税価格(Customs Value)を算出できる、という前提になります。

課税価格の計算における「原則的な方法」は、特に難しい計算式がある訳ではありません。

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現実支払価格に加算要素を加える方法が原則。

買手から売手に支払う「商品代金の総額」(これを「現実支払価格」と言います。)に、その含まれていない限度で「運賃などの費用その他取引価格に加算すべき金額」(これを「加算要素」と言います。)を加算した価格を「課税価格」とする考え方です。

つまり、前回のブログ(→ 申告価格を誤る理由を考える)でも述べたように、「取引価格(Transaction Value)」をCIF(運賃保険料込み)価格にすることです。

一般的に、海外から輸入する商品の仕入書(インボイス:Invoice)は、このCIF価格で仕切られていることが多いのではないでしょうか。良し悪しは別として、航空貨物でも、コンテナ貨物でも、同様だと思います。

だから、実際に多くの輸入申告においても、個々の「インボイス価格」を邦貨に換算した価格で申告して問題がない訳です。

この、「現実支払価格」の「現実」という言葉に、私は何となく違和感がありますが、評価協定上は、「The price actually paid or payable」という表現となっています。

また、「加算要素」の考え方ですが、本来、輸入する「商品自体の価格」を考えた場合は、EXW(工場渡し価格)条件の価格が最もこれに近い訳で、運送費用などは単に輸入取引に不可欠な要素の金額だと言えます。

つまり、「加算要素」とは、この「商品自体の価格」に加算される要素、だと思えば良いのではないでしょうか。

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現実支払価格に含まれるべき金額は。

そして、まず注意が必要なのは、この「現実支払価格」の捉え方です。

貿易取引における一般的な商慣習や決済条件等を考慮すると、「インボイス価格」に含まれていないけれども、「現実支払価格に加えるべき金額」や、「インボイス価格」に含まれているけれども「現実支払価格から減らすべき金額」がいくつか見えてきます。

この「現実支払価格に加えるべき金額」の例としては、輸入取引において別払いした手付金や、前のブログでも述べた弁済や相殺が該当します。

つまり、本来の商品代金を正しく計算するときに、「契約時に引かれてしまった金額」を足して考えよう、ということです。

「現実支払価格から減らすべき金額」とは、例えば、DAP条件やDDP条件で仕切られた輸入取引を考えれば分かりやすいでしょう。輸入港に到着した後の運賃や輸入地で支払った関税や消費税は、その額が明らかであれば減額することができます。(→ Incoterms 2020 JETROの資料へ

その他、輸入後の据付け費用や延払金利も、CIF価格を課税価格とするのが基本ですから、やはりその額が明らかであれば減額することができます。

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加算要素は限定列挙されている。

次に、「加算要素」です。「加算要素」は、運賃と保険料だけではありません。ただ、その内容は、評価協定において、次のように限定列挙されているので、運用はそれ程難しいものではありません。

まずは、運賃や保険料などの運送に関連する費用です。

次が、仲介手数料などの手数料と、容器及び包装の費用。

さらに、買手から売手に無償又は値引きして供給された部分品や素材、技術、工芸などの金額は、その提供に要した費用を含めて、原則として「加算要素」とされています。

また、その商品の輸入取引を締結する際に売手から要求されたロイヤルティやライセンス料なども、インボイス価格に含まれていない場合は、「加算要素」となります。

最後が、その商品の輸入後に生まれた収益のうち最終的に売手に帰属するものです。

次回は、「現実支払価格」の中身や「加算要素」の内容について、もう少し掘り下げてみたいと思います。

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私は、関税評価に関する個別の問題や、基礎的な社内教育などについて、ご相談に応じています。

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