デパートやホテル、あるいはマンションの出入口などにある二重扉のことを「風除室(ふうじょしつ)」と、言います。一般には、「屋外の冷気や熱気の流入を妨げ、屋内の室温を保つために設置される」(Wikipedia)ための施設のようですが、例えば、マンションの出入口等の場合は、建物側のドアがオートロックになっていて、風除室までは誰でも自由に入れますが、建物に入るには鍵を使うか、警備員に開けてもらう必要があります。
乱暴な言い方かもしれませんが、関税法上の保税蔵置場とはそういう場所かもしれません。
外国から何かを輸入する場合、到着した貨物は、特別な場合を除いて、必ず保税蔵置場に一旦入れられてから輸入申告されます。そして、税関が審査している間は、その場に留め置かれ、また、いつでも税関の検査が受けられる様にしておく必要があります。
その上で、関税などを納め、国内に入れても問題ないものとして輸入が許可されて後に、扉が開いて中に入ることができます。
輸出の場合は、税関への申告は保税蔵置場に入れる前でも構いませんが、その後に貨物を保税蔵置場に搬入して、いつでも税関の検査に応じられるようにしてからでないと許可が得られません。ただ、この場合のロックは外側のドアについていますから、そうすると、風除室というより、エアロックが妥当な例えかもしれません。
でも、やはり、エアロックは一般に身近ではないのと、皆さんご存じのように、2011年10月から、輸出通関における保税搬入原則が見直しされており、保税地域の役割は輸出通関においてやや低下していると思えるので、保税蔵置場は風除室、それも「セキュリティ対策がきちんと施されたマンションの風除室」のイメージでよいかもしれません。
従って、保税蔵置場は、その施設自体のセキュリティが、24時間365日、きちんと機能している必要があります。
ドアはきちんと施錠され、ガラス壁等も強固で、外部からの侵入や危険物の投げ入れなどから住民をしっかりガードしているのは当然のレベルであって、例えば、無理にドアをこじ開けようとすると直ちに警備会社に通報が行く程度のレベルが求められます。
勿論、警備員が常駐しているとか、監視カメラがついていて、不測の事態にもきちんと対処できるようであれば、なお良いでしょう。
ただし、機能が充実しているだけでは、まだ、不十分です。その風除室からマンションに入るための鍵は誰が持ち、どの様に管理されるか、セキュリティ全体の責任を誰がどの様に負うか、鍵を含めた風除室全体の定期的な点検はどの様に行うか、それらをきちんと文書にして、関係者全員が理解し、一致協力して問題なく運用されている必要があります。
なお且つ、その運用に関する決め事は必要に応じて適切に見直しがなされており、また、その運用が正しく実施されていることを自らチェックできる体制も必要です。
これを保税蔵置場にあてはめて、関税法等の保税に関する規定にまで広げれば、コンプライアンス(法令遵守)が十分に保持されているか、ということになります。
従って、保税蔵置場の許可を得るためには、こうした点に着目して準備すればよい、ということになります。
保税蔵置場の許可を得ようとするときは、まず、外国貨物を保管しようとする施設(場所)について、その管理者の貨物管理能力(業務経験、人員、設備、資産等)に問題がないことが重要です。
この「業務経験」というのは、貨物の保管や仕分け、配送等の一般の倉庫業務だけでなく、社として関税法上の保税制度(記帳義務等)の経験がある、又はそういう業務経験を有する者が在籍することが望ましい、とされています。
そして、関税法等の法令遵守(コンプライアンス)体制が整備されており、貨物のセキュリティ管理能力(建屋等の状況や警備手段)が整っている必要があります。その上で、恒常的に外国貨物の保管の見込みがあるとして、税関が問題ないと判断した場合に、保税蔵置場の許可を受けることができます。
セキュリティに関しては、基本的に「倉庫(土場を含む。)内の貨物に外から容易にアクセスできない」程度の管理が必要です。これは、一般に、「荷抜き」、「すり替え」、「差込み」がされない状況かどうか、個々具体的にその状況等を税関が検討し、判断することになりますので、最初の許可を得るまでは相当の日数がかかるのが通例です。
また、外国貨物の貨物管理には、関税法上の搬入(入庫)から、当該貨物の取扱い(改装・仕分け、内容点検、マーク訂正等)、輸出入等の許可、搬出(出庫)に至る税関手続きをきちんと行うことができる他、それらの行為について保税台帳への記帳を行う必要があります。そのためには、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)というプラットフォームを導入することが多いと思います。
つまり、保税蔵置場となった後も、関税法で求められるセキュリティ管理とコンプライアンスの保持を継続していくための具体的な努力が求められます。
そこで重要なのが、保税蔵置場の内部監査と社員教育の継続ですが、その辺りのことは、また、いずれ。
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