今回は、最近の成田空港から積み出される貨物量の急激に伸びている状況と、併せて、航空貨物として輸出される品物はどういったルートで積み出されるのかを簡単に見てみたいと思います。
成田空港の貨物量が急回復している。
2020年の成田空港の国際航空貨物のうち、海外に飛んで行った貨物の量、つまり「積込み量」は、対前年比9.9%マイナスの約87万トンでした(→ こちら)。
まあ、昨年1年間は、コロナ(COVID-19)の影響で国内生産と海外の需要も減少したので、予想された状況ではあったと思います。
この積込み量について、一般に、成田空港での取扱量というのであれば成田空港の税関で通関したものかと思わるかもしれません。
ところが、概ね6割以上の輸出貨物は、中部空港などを含む成田地域以外の場所で輸出通関されています。先の成田空港の積込み貨物のうち、この「成田地域以外」で通関された貨物の量は、逆に対前年比で約5.5%増加しています。
また、成田空港での積込み量のうち、2020年10月から12月の3か月間で見ると、むしろ対前年比は増加しています。
特に昨年12月は約9.8万トンと、前年12月と比較して15.5%も増加しています(→ こちら)。過去10年間で最多との観測もあります。
この背景はいろいろあるでしょうが、例えば、コロナ禍をいち早く抜けた中国の急激な景気回復、最近の日本での海上コンテナの供給逼迫、その原因ともなった米国西海岸での海上貨物の滞貨などが思い浮かびます。
航空小包として郵便で輸出するのが最も簡単かもしれない。
さて、では、航空便で貨物を輸出するにはどの様な方法があるでしょうか。真っ先に思い浮かぶのは郵便でしょう。郵便局はどこにでもあり、誰でも気軽に利用できます。
航空郵便のうち、EMS(Express Mail Service)なら、1個当たり20kgまでですが、米国東海岸でも2日で着きます。EMSの他にも、急がなければ、一般の航空便やSAL便(エコノミー航空便)も利用できます。ただし、航空郵便は基本的に30kgまでの小包に限られます。
郵便路線の難点として、個人的には、外国の郵便配達員が、日本の郵便配達員ほど律儀ではないような感覚がありますが、実際のところはよく分かりません。
航空小口貨物として輸出するのも便利。
次は、いわゆる国際宅配便でしょうか。Door to Doorで、迅速かつ的確に品物を運んでくれます。この業種は、一般的には、DHL、FedEx、UPSといった、いわゆるインテグレーター(Integrator)を指しますが、“世界の日通”をはじめ、ヤマト運輸や佐川急便など日本の宅配事業者も手広く扱っていて、なかなか便利な感じがします。
料金は多少高い感じがありますが、荷物がまとまれば安く受けてくれるなど、多少の融通もきくようです。
こうした小口の貨物を「航空小口貨物」とも言い、近頃の巣ごもり需要の影響によるECの増加等に伴って、特に輸入航空貨物の申告件数は顕著に増加しています。
最近、国際宅配便のことを“クーリエ”とも言うようです。でも、本来のクーリエは、手荷物として他人の書類や貴重品等を運ぶ職業の人のことですね。手元のLongman Dictionaryでは、“ courier: a person or company that is employed to carry message or other official papers esp. of an urgent or official kind “と記載されています。
航空フォワーダーが最も多く荷物を運んでいる。
最後は、航空フォワーダー(国際フレイトフォワーダー)です。むしろ、重量ベースや容量ベースでいえば、一般の航空貨物の多くは、この航空フォワーダーが、その運搬業務の一切を引き受けてくれています。
この、航空フォワーダーについては、JIFFA(国際フレイトフォワーダーズ協会)のホームページ(→ こちら)に詳しく、会員名簿等も掲載されていますので、興味のある方はご参照ください。また、航空フォワーダーは、IATA(国際航空運送協会)加盟航空会社代理店を兼ねる場合も多いようです。
航空フォワーダーは、限られた飛行機の貨物スペースを安定的に、かつ、できるだけ安価で仕入れながら、デリケートで、かつ、足の速い航空貨物を、顧客(荷主)の様々な要望に応えつつ、安全に、迅速に、また的確に外国の目的地へ運ぶことを毎日要求される、結構ハードな仕事をしています。
海上貨物だと、荷物を運搬するために預かった船会社がB/Lを発行しますが、航空会社も同様にAWB(MAWB: Master Air Waybill)を発行します。
航空フォワーダーは航空会社の顧客でもある利用運送事業者なので、荷主に対してHAWB(House Air Waybill)を発行します。
航空貨物の輸出は、電子機器などの高付加価値品、電気部品等の製造(補給)部品、化学品、貴重品などを、外国に急いで安全に送りたい荷主が、航空フォワーダーに輸出を依頼し、その依頼を受けた航空フォワーダーが自社システムを介してHAWB番号を払い出すところから始まります。
航空フォワーダーは、次に、顧客のもとに走って貨物を集荷し、自社の倉庫(フォワーダー上屋)において、現品の外装チェック、危険物等のラベルチェック、HAWB情報(LDR情報)との突合などを行います。
そして、積込み間近になって、エアラベルを貼付し、保税蔵置場への搬入処理(情報登録)、輸出申告を行い、輸出許可後に空港上屋へ向けて搬出します。
空港上屋は、成田空港を含む国際空港の敷地内にある貨物施設で、基本的には、そこに搬入された後、積み込む予定の航空機の貨物スペースに合わせて、ビルドアップされることになります。
従って、例えば、中部国際空港で輸出通関された貨物でも、成田空港から輸出されるのであれば、トラック便で成田空港まで運ぶことになります。
なので、本来、航空フォワーダーの事務所や倉庫は空港地区になくても構わない訳です。例えば、東京近郊であれば、航空フォワーダーやIntegratorは23区内に大規模な集荷施設を有し、成田や羽田に対応する体制を整えています。
地方なら、むしろ、高速道路網の利用に便利な場所が良いということになります。
フォワーダー上屋は空港になくていい。
だから、例えば、中部地区の航空貨物は成田や関空から多く輸出されている実情にありますが、中部国際空港ができる以前は、航空フォワーダーの多くが名古屋駅付近に集中していました。
税関の出張所も、今は廃止されていますが、名古屋駅近くに、中出張所という中規模の出張所があり、そこで航空貨物を輸出通関していました。
中部国際空港ができた当時、空港島にフォワーダー地区を設け、名古屋駅付近のフォワーダーの多くがそこに移転しました。空港とフォワーダー施設が一体となったことで、インタクト輸送(フォワーダー上屋でビルドアップされた貨物を直接空港上屋へ搬入すること)を可能にした訳です。
でも、中部空港自体の国際航空路線が十分でなければ、その運用は難しいということです。言い換えれば、空港のインタクト輸送を可能にしても、それだけでは貨物便(フレイター)を含む国際線フライトを呼び込むことは難しいということでしょう。
航空貨物を含め、通関手続や保税蔵置場の運用などについて、ご相談をご希望の方は、当方の業務内容やプロフィールに一度目を通されて、どうぞメール等をお寄せください。(→ こちら)
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