前回のブログから半年以上経ってしまいました。申し訳ありません。
お遅ればせながら、その続きとして、「輸入の許可前における貨物の引取り制度」(以下「BP」と言います。)に係る説明の後半です。
関税を納付しなくとも商品を受け取れる場合がある
前回のブログでは、BPの基本的な内容として、
- 制度の概要
- 関税の納付と輸入の許可との関係
- 関税等の納期限延長制度との違い
- どういう場合にBPが認められるか
について、解説しました。
まず初めに、復習として、関税法第73条第1項の条文(要約)を見てください。
「外国貨物(特例申告貨物を除く。)を輸入申告の後輸入の許可前に引き取ろうとする者は、関税額(加算税を除く。)に相当する担保を提供して税関長の承認を受けなければならない。」
例えば、輸入申告した貨物のHS品目分類について税関の審査に時間がかかりそうだ、とか、申告価格の妥当性の審査に時間がかかりそうだなどの場合に、引取りを急ぐときはBPを利用できます。
一方、単に確定した関税等の納期限の延長を目的とするなら、「納期限延長制度」(⇒ 関税法第9条の2第1項、第2項)を利用することとなります。
そして、いずれの場合も、その関税等に相当する担保を税関に提出することが前提条件となっています。こうした、必ず担保を提供しないと次に進めない場合の担保を、「必要担保」と言います。

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無税品のBPは消費税等の担保が必要となる
ちなみに、この「関税等」には、消費税などの内国消費税も含まれますが、輸入貨物に係る内国消費税のBP同様の制度については、輸徴法(⇒ 輸入品等に対する内国消費税の徴収に関する法律)第9条に、要約すると次のとおり規定されています。
「関税法の規定によるBPの承認を受けて課税物品を引き取った者は、その納期限までに、税関の審査で確定した内国消費税を納付しなければならない。また、当該課税物件については消費税等に相当する担保を提供しなければならない。」
BPの承認は、関税が有税か無税かに関係なく受けることができますが、関税が無税のものであっても消費税等に係る担保を提供しないと商品は引き取れない、ということですね。
BPの担保は、保証人の保証が一般的かも
一般に、担保と言えば、銀行からたくさんお金を借りるときに、土地や家を担保として提供するとか、何かの債務を負うときに借りたお金を返す保証金などとして差し出すものですね。
BPの担保も同じ様に、貨物を引き取った後で、関税等の額が確定したら速やかに納付するという保証金のようなものだと言えます。
BPの場合、土地や家を担保として差し出すことは可能ですが、担保の種類などは、関税法第9条の11(担保)が国税通則法を準用することになっていて、具体的には、次の7種類となります。(⇒ 国税通則法第50条)
- 国債及び地方債
- 社債その他の有価証券で税関が確実と認めるもの
- 土地
- 建物、立木、登記される船舶、登録を受けた飛行機、自動車、建設機械
- 工場財団、鉱業財団、漁業財団、港湾運送事業財団などの財団
- 税関長が確実と認める保証人の保証
- 金銭
これらの担保を提供するにあたっては、例えば、国債や金銭の場合は法務局等に供託して、供託書を提出する必要があって、他にもその種類に応じた書面の提出が必要となります。
また、不動産の場合は抵当権が設定されることとなります。
なので、おそらく、一番多いのは、6番目の保証人の保証ではないでしょうか。
この場合の保証人の保証とは、原則として、銀行、長期信用銀行、農林中央金庫、商工組合中央金庫、信用金庫、生命保険会社、損害保険会社、外国生命保険会社等又は外国損害保険会社等の保証とされています。(⇒関税法基本通達9の11-1(5))
BPの担保として提出する保証書の様式や書き方は東京税関のホームページから見ることができます。(⇒ 東京税関ホームページ「新規担保提供の手続き」)

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担保額は、輸入申告税額の1.1倍が目安
では、その担保の額は、どの様に決まっているのでしょうか。
BPの際の担保の額は、税額の決定に特に問題がないと認められれば当該申告税額と同額となりますが、一般的には、原則として申告税額の1.1倍の額と考えてください。
さらに、申告税額とは別に、正当と認められる税額があって、その差が明らかに10%を越えると認められる場合には、当該正当と認められる税額に相当する額とされています。(⇒ 関税法基本通達73-3-3 )
つまり、例えば、申告価格100万円のプラスチック製のおもちゃを輸入するとして、そのおもちゃが、人間の子供用〔HS9503.00協定税率Free〕か、それともペット(犬、猫)用〔HS3926.90協定税率3.9%〕かで、品目分類について輸入者と税関で見解が分かれて、かつ、結論を出すのに時間がかかるからBPを申請することとした、とします。
この場合なら、ペット用(関税有税)とした場合の関税額39,000円に、消費税等の額103,900円を足した額、142,900円の担保が必要ということになると思います。
さて、BP承認を受けた貨物は、税関の輸入許可を得なくとも保税地域から引き取って、マーケットで売ることができます。
しかし、それで、利益を得てしまえば、もう終わりかというと、勿論、そうではないですね。
税関への申告は、途中で中断したままになっているので、そのBPとなった理由が解消されれば、関税等を納税して、輸入の許可を得て、担保も解除してもらう必要があります。
この手続きを、IBPと言います。

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BP承認から概ね3か月以内にIBPすることが求められる
税関としても、あまり長期間BPの状態が続き、納税が遅れた状態のままでおくと、結局、期限を定めないで関税等の納期限を延長したことになるので、課税の公平という観点からは良くありません。
では、その「BPの理由を解消しなければならない」時間の余裕(目途)は、何日くらいでしょうか。
税関は、BPを承認した後は、できるだけ速やかに検査、鑑定その他の事務処理を行うこととしています。
また、例えば、価格交渉が長期化するとか、特別な取引実態が認められる場合を除いて、原則として、BPの承認後3月を経過しても輸入許可に至らない場合は、輸入者に対して、その理由を明らかにするよう促すなど、輸入許可(IBP)の促進を図ることとしています。(⇒ 関税法基本通達73-3-4 )
この3か月という目安は、申告納税方式が適用される貨物の関税の納期限の延長制度に係る関税法の規定(関税法第9条の2)において、「延長の期限は輸入の許可の日から3か月以内」としていることとも、整合性が取れていますね。
ただし、例えば、EPA特恵税率の適用を受けようとしたが、原産地証明書が輸入申告の時までに入手できなかったという場合、原産地証明書の提出猶予が認められる場合がありますが、その提出猶予の申出は、担保を提供してBPの承認を受けることが前提となっています。(⇒ 関税法施行令第61条第4項)
この場合、その原産地証明書の提出猶予を認められる期間(=IBPしなければならない期限?)は、何日くらいでしょうか。
関税法施行令上は、「申告後相当と認められる期間」と、やや曖昧な表現で規定されていますが、通達では、「原則として、2か月以内で適当を認める期間」とされています。(⇒関税法基本通達68-5-16)
一方、実態として、例えば、LME(London Metal Exchage:ロンドン金属取引所)での取引価格によって売買価格を決定するという契約になっているアルミインゴットの輸入など、3か月以上経っても課税(申告)価格が決まらないケースの場合は、その事情を税関に十分に説明することで、柔軟な対応を受けられるかもしれません。

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.customs.go.jp/kaisei/zeikantsutatsu/kihon/TU-S47k0100-s06-03~04.pdf
BP承認貨物を外国に向けて送り出す時は輸出申告が必要
BP承認を得て保税地域から引き取られた商品は、まだ税関の輸入の許可を受けていない貨物です。では、その商品を、訳があって外国の製造元に送り返すことになったとしたら、どういう手続きになるでしょうか。
関税法第67条の輸出の手続きでしょうか。それとも、同法第75条の外国貨物の積戻しでしょうか。
BPの根拠条文である関税法第73条第8項を要約すると、以下のとおり規定されています。
BPの承認を受けた外国貨物は、この法律の適用については、第4条(課税物件の確定の時期)、第5条(適用法令)、第72条(関税等の納付と輸入の許可)、第105条(税関職員の権限)、第106条(特別の場合における税関長の権限)を除くほか、内国貨物とみなす。
「みなす」という言葉は、「法的効果は同じである」という意味です。
そうすると、BP承認を受けた貨物は、上に掲げたごく一部の条文の適用を除いて、関税法上は内国貨物である、ということになります。
さらに、関税法第2条第1項第2号には、
「輸出」とは、内国貨物を外国に向けて送り出すことをいう。
とありますので、BP承認を受けた商品を外国に向けて送り出す場合には、関税法第67条に基づき、税関に輸出申告をして、その許可を受ける必要がある、ということになりますね。
これで、半年に亘った(2回だけでしたが)BPに関する解説を終わります。
次は、ちょうど大阪・関西万博が開催されていますので、保税展示場の仕組みなどについて述べてみたいと思います。
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宜しければ、以下の当ブログも、ご参照ください。
2019.11.19 輸入する貨物の保税蔵置場は、例えれば「風除室」とか
2020.10.11 保税工場を“生産拠点の国内回帰”に活かそう
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特に、輸出入を業とする企業や製造業者の皆さんにあっては、納税前に貨物を引き取りたいケースも少なくないと思います。そうした場合の通関の方法等を含め、通関に関する社員教育は、特に重要だと思います。私はそうした内容の社内教育等も可能です。
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