これを日本で売ったらきっと儲かるだろう、と思う商品が、海外サイトなどを見ていると時々目に入って来ます。また、自社で開発した商品を海外の工場で製作して輸入することも多くの日本のメーカーが行っていることです。
実際には、そうした商品を輸入するまでに、見本やカタログで商品の詳細を確認し、或いは、設計、材料・資材の調達、工場の手配、試作と改良など、様々なプロセスがあります。
さらに、売買契約と、これに付随する様々な契約などを経て、現地での輸入貨物の発送準備が整えられることになります。
それからも、集荷や一時保管の手配、コンテナと船腹の手配、積付け、船積み港までの運送、船積みなど多くの手間をかけて、ようやく商品が現地を発送されたのち、船が日本の港に到着するまで、気の抜けない状況が続きます。
勿論、その間に、前払金の送金や決済や信用状の開設など、決済手段に関する手続きも進めなければなりません。販売計画も整って、来週には商品を棚に並べないといけない、という場合もあるでしょう。
そうして、ようやく手に入りかけた商品が、日本の輸入通関のところで、予期せず止まってしまうことがあります。
商品が手に届く直前で止まってしまう。
そうなったら、担当者は怒り心頭、とまではいかなくとも、通関業者に文句の一つも言いたくなるのは当然かもしれません。
その貨物を税関が現物検査をすると言っているのであれば、港頭地区でデバン(コンテナから商品を出すこと)をして、翌日に検査を受ける、という場合でも、まあ、許容範囲かもしれません。
でも、「税関が、時間がかかると言っています。」とか、甚だしくは、「税関が輸入できないと言っています。」と言われたら、何が何だか分からないが、何とかしろ、と言いたくなりますよね。
さて、では、どういう場合に、そうなってしまうのでしょうか。
原因としては、様々な場合が想定されます。
通関は、様々な要因で、思いがけずストップすることがあります。
例えば、
- 申告税番(品目分類、税率、統計細分)が間違っているのではないか。
- 構成材料の割合などによって税率が変わるので、税関による成分等の分析が必要。
- 申告価格が妥当ではない(輸入取引価格ではない)のではないか。
- インボイス等の内容からは、分類や価格の妥当性、他法令の該否等が判断できない。
- 原産地証明書の内容に誤り(期限切れ、サイン漏れなど)がある。
- 原産品申告書等の内容と申告貨物に違いがある。
- 食品衛生法上の届出が必要な貨物なのに、その手続きがとられていない。
- 医薬品医療機器等法上の医薬品(医薬部外品、化粧品、医療機器)に該当する。
- ワシントン条約で規制されている植物(動物、動植物の一部)が使用されている。
- 輸入貿易管理令による規制がされており、輸入割当(事前承認、事前確認など)が必要。
- 原産地の虚偽表示(誤認させるおそれがある表示)に該当する表示がある。
- 商標権(著作権、著作隣接権)を侵害する表示があるので認定手続きが必要。
- 特許権(実用新案権、意匠権)を侵害する物品として認定手続が必要。
などがあげられます。
では、そういう場合に、できるだけ早く引き取るにはどうすれば良いでしょうか。
まずは、税関が何を問題にしているかを明確にする。
まずは、税関が何を問題にしているかを明確にする必要があります。
一義的には、通関業者からの聞き取りと、通関業者を介した説明になりますが、場合によって、輸入者による「説明書」や商品説明資料の提出や、直に税関窓口で説明することで早期に解決する場合もあります。
特に、品目分類で時間がかかる場合は、通関業者と共に税関に赴いて、きちんと説明することで税番が決定し、許可になることがあるでしょう。
加えて、関税鑑査官などの専門知識を持った税関職員と、技術的な面を含め、納得のいくまで話をすることで、その後の商品の仕入れや、次の製品の生産・製造計画などに有益な話を聞くことができるかもしれません。
事後審査扱い、輸入許可前引取りの承認を打診する。
輸入貨物の品目分類(税番、税率、統計細分)や申告価格は、税関が決めるのではなく、輸入者(通関業者)が一義的に決めて申告することになっています。
そのため、申告後に税番や価格が税関の見立てと異なる場合には、審査が止まります。
その異なることとなる原因や態様は様々だと思いますが、そこを早く通り抜けようとするなら、例えば、関税率が同じ場合はそのまま税関の意見に従って、修正すればよい訳です。
しかし、税額が大きく増える場合は、輸入者としても時間をかけて検討する必要があります。
その場合は、税関に相談して、最終的に高税率の品目分類に結論付けられた場合は修正申告するとの約束の下で「事後審査扱い」にしてもらう方法があります。
或いは、必要な担保を積んで、「輸入許可前引取り」(BPと言います。)(→ こちら)の承認が得られれば、納税を後回しにして商品を引き取ることができます。
申告価格の決定に時間がかかるとか、輸出地の状況などの確認が必要で、直ぐには結論が出ないという場合も、同様に「輸入許可前引取り」の承認が可能かどうか税関に相談することができます。
問題となっている商品(部分品、部材)を分離する。
また、問題になっている商品が一部で、物理的に分離できるものであれば、その商品だけを分離して、問題のない商品や部分だけをとりあえず通関するという手もあります。
あくまで、税関が「その処理方法で問題ない」と判断した場合ですが、案外、そういう判断をしてくれることも多いように思います。
ある商品だけ品目分類が決まらないとか、一部の部品だけ他法令やワシントン条約に該当するおそれがあるとか、一部の商品の表示が問題になっているなどの場合、その商品だけ、問題となる部材だけを切り離します。
コンテナ貨物であれば、一旦、保税蔵置場に入れてデバンし、そこで仕分け処理してもらい、申告書の中からも当該商品を除くよう補正して、残りの商品の輸入許可を受けます。
問題となる部分品等を切り離す作業が、保税地域での「簡単な加工」などに該当する場合は、事前に保税部門で「取扱いの許可」が必要ですが、その申請は通関業者でも可能です。
また、当該作業は、保税地域内であれば、輸入者自身や下請け業者などが行うことも可能でしょう。
問題のある表示を取り外す、削り取る、塗りつぶす、抹消する。
原産地表示に問題がある場合、商標権等を侵害する表示がある場合には、その部分を切り取る、削り取る、塗りつぶす、適正な表示を被せる、などの処理(保税地域での「取扱い」作業)を施すことによって、輸入申告(許可)が可能になる場合があります。
勿論、その表示の大きさ、表示されている商品の場所、商品の数量、商品価値への影響、作業に要する費用などによりますが、選択肢としては、あります。
問題のある商品は、通関をあきらめる。
身も蓋もない話になりますが、他法令の許可、承認、届出の手続きが必要という場合、直ぐにはその承認等が得られない、という場合が多いと思います。
知的財産侵害物品の疑いがある場合も、権利者の同意が得られる可能性はありますが、対価が必要になるでしょうし、認定手続は時間がかかります。
そもそも、特許権や商標権、意匠権などの知的財産を侵害する物品、ワシントン条約に該当する貨物、原産地の誤認させるおそれのある貨物の積戻し(外為法上は輸出)は、輸出貿易管理令上の承認が必要ですが、実質的には承認されない場合が多いと思います。(→ こちら)
そうなると、残念ながら、後は「滅却」しかありません。税関の事前の承認を得て、粉砕、焼却などの処分をすることになります。
そうした場合においても、影響を最小限にとどめるためには、先に、分離しておく方がよい訳です。
また、売買契約の状況や売り手との関係にもよりますが、そうした事態が買い手の想定になく、売り手によるミスなどの場合は、クレーム処理で損害をカバーすることも検討してみてはいかがでしょうか。
以上、特に今回は、「方法があります」とか、「かもしれません」という不確かな表現になってしまいましたが、輸入申告貨物の個々の状況に応じた、その時の税関職員の判断によるところ大だと思いますので、どうぞご容赦ください。
ただ、勿論私も、輸出や輸入の通関が突然止まったときのご相談に応じています。(→ 貿易・通関・保税に絡む問題を解決したい GTConsultant.net )
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