最近、アメリカや日本で種類不明の植物の種が中国から郵便で届くという事件が頻発しています。もし、皆さんのご自宅などに同じものが届いても、庭などに植えるのは絶対に避けて欲しいと思います。
日本の農産物、生態系に影響を与えるかもしれない。
一つは、皆さんがお住まいの地域の、或いは日本の生態系を壊す危険性が極めて高いということ。
例えば、日本で花粉症の大きな原因となっている「ブタクサ」は、本来、外来種で、原産の北アメリカでも、やはり多数の人々に花粉症を引き起こす原因植物とされていますが、今は日本で雑草として広く分布しています。
時折、「ブタクサ」と混同される「セイタカアワダチソウ(ゴールデンロッド)」も、やはり北アメリカ原産の外来種です。こちらは蜂蜜が採れるほどの虫媒花なので、花粉症の原因にはなりませんが、「アレパシー」(ほかの植物枯らす物質)を有し、日本の固有植物などを駆逐してきました。
内容不明の植物の種が、日本お米や野菜、果物などを駆逐する種類の植物であるかもしれない、ということです。
綺麗な花には毒がある、かも。
もう一つは、世の中には薬になるが、同時に猛毒も持つ植物が意外に多いということです。
ワシントン条約に該当する植物について、アロエや木香をはじめ、漢方薬の原料等になる植物が沢山ありますが、薬は簡単に毒に変わります。
「キョウチクトウ(夾竹桃)」や「ダチュラ(チョウセンアサガオ)」、「スズラン」などは、身近なところに多く生育している綺麗な植物ですが、人を死に追いやるほどの猛毒があることで知られています。
また、麻薬であるモルヒネやヘロインの原料となるのは阿片(アヘン)ですが、その原料植物は「ケシ(ポピー)」です。でも、麻薬成分が採れるケシと、採れないケシの区別は、一般に難しいと思います。
ラン全種、サボテン全種がワシントン条約に該当する。
さて、前回の続きですが、ワシントン条約に該当する植物で、海外から購入する場合に気を付けたいのは、「ラン」と「サボテン」です。
毒があるかどうかは別にして、いずれも大変身近な植物ですが、「ラン科全種」、「サボテン科全種」がワシントン条約の附属書Ⅱに該当し、一部は附属書Ⅰに該当します。(→ こちら)
一方で、「ラン」や「サボテン」は、今でも外国から沢山輸入されています。
一般に輸入される花や株は、いわゆる自生、野生ではなく、人工繁殖(フラスコ栽培など)されたもので、きちんとその証明書を付して、ワシントン条約非該当の個体として輸入されているものです。
或いは、「ラン」は、人工繁殖させた個体の切り花であれば附属書からは除かれ、サボテン(附属書Ⅰ該当種以外のもの)も、メキシコから輸出されるもの以外の「種子」は非該当となります。
いずれにしても、これだけ身近な種類である「ラン」や「サボテン」が、本来、絶滅の恐れがある種だと言えるのかどうか、という疑問が沸きます。
ずっと以前、特に、ラン科やサボテン科の植物は、分類が複雑過ぎて(学説もいろいろあるらしく)、とりあえず全種を対象にしたと聞いた覚えがありますが、真偽のほどは定かではありません。
植物界で、他に、よく税関で止まってしまう種類としては、
- トウダイグサ科全種
- キョウチクトウ科フーディア属(ガガイモ)全種
- チョウセンニンジン(粉末、錠剤、強壮剤、茶、菓子等の加工品を除く)
等があります。
冬虫夏草やマツタケもいずれは。
ちなみに、冬虫夏草(フユクサナツムシタケ)が、国際自然保護連合(IUCN)のレッドデータリスト(1A)に新規に掲載されたとのニュースがありました(→ こちら)。
このリストは、ワシントン条約とは異なるので、輸出入規制はされていませんが、いずれ、日本のマツタケなども候補になるかもしれません。
本来、ワシントン条約は、「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)ですから、「国際取引の継続」を目的にしています。学術的な意味、厳密な意味合いでの「野生動植物の保護」とは、少し違うものなのですね。
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