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密輸取締り

偽ブランド品等の認定はどの様に行うのか

本年9月4日に、財務省・税関は、2026年上半期の税関における知的財産侵害品の差し止め状況を公表しました。(⇒こちら
この発表資料によれば、輸入差止件数(19,568件)と輸入差止点数(1,386,640点)は、上半期としては過去最高であったとのことです。特に点数は、昨年同期の約3倍と急増し、近年の年間差止点数をも既に上回っています。
仕出国別にみると、中国が全体の81.9%(16,026件)で、相変わらず最多となり、権利別では、件数ベースで商標権侵害品(いわゆる偽ブランド品)が86.1%で圧倒的に多かったようです。
一方、点数ベースでは、商標権侵害品が40.3%であったほか、意匠権侵害品が37.0%、著作権侵害品も21.7%となり、特に意匠権侵害品の急増が目を引きます。
今回のブログでは、その輸入を差し止めるに至る過程と、その後の税関による知的財産侵害品の認定がどの様に行われるのかを解説したいと思います。

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偽ブランド品かどうかを税関がジャッジする

輸入されようとする貨物が、偽ブランド品(商標権侵害品)やコピー商品(意匠権や著作権侵害品など)、特許権侵害品などの疑いがある貨物(これを、「疑義物品」と言います。)の場合、税関は関税法に基づいて、その輸入を止めることができます。これが「輸入の差止め」です。その後に、税関が偽ブランド品やコピー商品などであるか否かを認定しますが、この手続きが「認定手続」です。
知的財産を侵害する物品であると認定されれば、関税法上の「輸入してはならない貨物」(⇒ 関税法第69条の11第1項第9号から第10号まで)として通関が認められず、最終的には税関による没収・廃棄等の対象となります。
つまり、税関がその貨物の輸入を差し止めて終わりではなく、輸入者・権利者双方に主張の機会を与えたうえで、税関が侵害の有無を「認定」するという行政手続(処分)が認定手続ですが、一面では、裁判官のような役割ともいえる様に思います。
なので、私は、よく、これを「税関がジャッジする。」という言い方で説明する場合があります。
本稿では、このジャッジの流れを、始まりから終わりまで時系列で整理します。

初めに、権利者の輸入差止申立がある場合が多い

先に述べたように、認定手続とは、税関が、輸入されようとする貨物が商標権等を侵害する物品に該当するかどうかを、関税法の規定に基づいて判断する手続です。(⇒ 関税法第69条の12
輸出貨物についても、認定手続を含め、偽ブランド品等を輸出させない手続きがありますが(関税法第69条の3~第69条の10)、本稿では、分かりやすさを考慮して、輸入貨物の手続きをご紹介します。
そして、この判断(認定手続)の前段階として、権利者があらかじめ税関に対し「輸入差止申立て」を行い、自社ブランドの権利内容や真正品との識別ポイントを届け出ておく制度があります。

これを「差止め申立て(手続)」と言います。(関税法第69条の13)
この申立てが受理されていると、当然、税関の水際での発見率は高まり、発見後の認定手続もスムーズに進みやすくなります。
ただし、申立てがなくても、税関が通常の輸入審査の中で侵害の疑いのある貨物(疑義物品)を発見すれば、認定手続は開始されることとなっています。

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税関職員が疑義物品を発見したらスタート

認定手続は、次のいずれかの形で「疑義物品」が見つかったところから始まると言えます。
① 権利者があらかじめ行った輸入差止申立てに基づき、税関が該当する貨物を輸入申告の中から発見する場合
② 申立ての有無にかかわらず、税関が、通常の審査・検査の過程で、商標権侵害の疑いがある貨物を独自に発見する場合
いずれの場合も、税関(担当の税関職員)が、「侵害の該否について認定する必要がある」と判断した時点で、その輸入通関は止まり、認定手続の開始へと進みます。

STEP1 認定手続開始通知

① 税関は、権利者と輸入者の双方に対し「認定手続開始通知書」を送付し、認定手続を開始したことを通知します。
この通知には、輸入者には権利者の、権利者には輸入者と仕出人の氏名及び住所などが記載されていて、併せて、申告書類などから生産者が明らかな場合は、その氏名及び住所も権利者に通知します。
これにより初めて、輸入者は「自社の輸入貨物が権利侵害の疑いをかけられている」こと、権利者は「自社の権利を侵害する疑いのある貨物が発見された」ことを知ることになります。
② 原則として、税関が指定する期限(概ね2週間程度)内に、輸入者及び権利者双方とも、当該疑義貨物が知的財産侵害物品に該当するか否かについて、税関に証拠を提出し、意見を述べることができると記載されています。
また、輸入者が知的財産侵害物品に該当しないことを主張する場合には、それを証する書類の提出が求められます。
一方、その期限内に、輸入者が「侵害を争う」旨の意思表示をしない場合は、後続手続きが、「簡素化」されることとなります。
よって、ここで、後続の手続が「通常手続」と「簡素化手続」のどちらで進むかが分かれます。

STEP2 通常手続か、簡素化手続か

① 輸入者が侵害の該否を争わない意思を示した場合、又は争う・争わないの意思表示がない場合は、権利者・輸入者双方から改めて証拠・意見の提出を求めることなく、税関が速やかに侵害の該否を認定します。
これを「簡素化手続」と言います。
ちなみに、この「簡素化手続」は、2007年に導入されたものですが、当初は、対象となる権利の範囲から「特許権、実用新案権、意匠権及び保護対象営業秘密」が除かれていました。
これは、当時、これらの権利に係る輸⼊差⽌申⽴の件数や輸⼊差⽌件数が少なく、侵害認定の技術的な部分に関し、税関が侵害の該否を即物的に判断可能かどうかについては必ずしも明らかでなかったこと等によるものです。
しかし、2023年10月に関税法施行令が改正され、現在は、商標権と保護対象営業秘密に加えて特許権、実用新案権、意匠権にも拡大され、より多くの事案で迅速な処理が可能になりました。(⇒ 関税法施行令第62条の16第4項第7号
② 輸入者が侵害を争う意思を示した(その旨を記載した書面を税関に提出した)場合は、通常の認定手続に進みます。
ちなみに、上記の関税法施行令第62条の1第4項第7号のかっこ書きの中を要約すると、
差止申立てが受理された貨物の認定手続においては、輸入者から、期限までに、争う旨の書面が税関に提出された場合に限り、証拠を提出し、意見を述べることができる
とされていますね。
これを「通常手続」と言います。
この場合、権利者・輸入者の双方に、証拠と意見を提出する機会が与えられます。

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STEP3 証拠・意見の提出

① 通常手続では、権利者は自社商標の正当性や侵害の根拠(真贋判定の資料など)を、輸入者は正規品であることや権利侵害に当たらないことの根拠を、それぞれ税関に提出します。
② この認定手続の開始通知からの標準的な処理期間は10執務日(必要に応じて最大20執務日まで延長可能)が目安とされています。
③ 輸入者は、この期間中、申請により、当該貨物の点検を行うことができます。
また、認定手続が執られた貨物の滅却、廃棄、任意放棄、積戻し、権利者の輸入同意書の取得、権利侵害に当たる部分の切除等の修正(郵便物は滅却、廃棄はできません。)ができます。
これを、「自発的処理」と言います。
「自発的処理」が行われた場合、税関は権利者にその旨を通知し、認定手続を取りやめることとなります。(関税法第69条の12第7項)
④ 権利者は、差止申立てを行った貨物について、点検と同時に、税関の承認を得て、見本検査(分解・分析など貨物の経済価値を減ずる行為を含む検査)を行うことができます。
この場合、侵害品でないとされたときに輸入者が被るであろう損害や逸失利益に見合った額の供託が必要になります。
⑤ 税関は、この双方から提出された証拠・意見をもとに侵害の該否を検討します。
なお、開始通知を受けた権利者及び輸入者は、通知を受けた事項又は見本の検査等において知り得た事項を、みだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならないとされています。
この場合の「他人」には通関業者も含まれるという解釈がありますので、注意が必要ですが、私は、通関業者(通関士)の専門知識とサービス内容を考えたときに、この解釈には、やや疑問を感じています。

STEP4 必要に応じた専門委員への意見照会

提出された証拠・意見だけでは侵害の該否を判断することが困難な事案では、税関は学識経験者等である「専門委員」に意見を求めることができます。(⇒ 関税法第69条の19)
特に技術的な判断が絡みやすい特許権、意匠権の事案で活用される傾向があるようですが、商標の類否(二つの商標の外観、呼称、観念から、似ているか否かを判断すること)や周知性の判断が微妙な事案でも用いられることがあります。
専門委員への意見照会が行われる場合、認定までの期間はその分延びることになります。

STEP5 認定——侵害か、非侵害か

税関は、収集した証拠・意見(必要に応じ専門委員の意見)を踏まえて、貨物が商標権を侵害するものかどうかを認定し、権利者及び輸入者双方に結果を通知します。
「輸入してはならない貨物」に非該当(侵害でない)と認定された場合は、通常の輸入手続に戻り、通関(関税等の納税の後、輸入が許可される)に進むことができます。
一方、該当(侵害品)と認定された場合は、次の認定後の措置のステップに移ります。

STEP6 認定後の措置

① 侵害品と認定された貨物については、原則として、税関による没収、廃棄がなされます。
② もっとも、輸入者には、これに先んじて取り得る対応もあります。
輸入者が任意に貨物を放棄する(これを「任意放棄」と言います。)、輸入者自らが滅却、廃棄する、権利者の同意が得られれば一部改変により侵害状態を解消する、などですが、税関とよく相談して行う必要があるでしょう。
③ 法令上、税関長は、積戻し(仕出人への返送)を命じることも可能ですが(関税法第69条の11第2項)、WTO・TRIPS協定では商標権を侵害する物品を無変更の状態で積戻すことは原則として認めていないので、権利の種類によっては難しいように思います。
自発的処理や侵害品認定後の積戻しについては、また、機会があれば、更に詳しく説明したいと考えています。

認定結果に不服がある場合は不服申立てや取消し訴訟ができる

勿論、認定の結果に不服がある権利者及び輸入者は、関税法(行政不服審査法)に基づく審査請求等の不服申立て(処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内)が可能です。

また、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟(直接提起する場合は、処分があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内)などの司法手続を通じて争うこともできます。
水際での認定はあくまで行政手続上の判断であり、知的財産の権利の存否について、最終的に裁判所で争う余地は残されている訳です。

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認定手続は税関が一方的に差し止めるものではない

以上、認定手続とは、「輸入してはならない貨物」として税関が一方的に認識して差し止めるものではなく、権利者と輸入者双方に主張の機会を与えたうえで税関が判断(ジャッジ)する仕組みです。
実務上は、① 権利者にあっては、あらかじめ輸入差止申立てを行って、真贋判定資料を整えておくこと、② 輸入者の場合は、認定手続開始通知を受け取ったら、速やかに正規流通の証跡(インボイス、取引契約書等)を準備すること、③ 双方とも、輸入者の争う意思の有無によって手続きの速さが大きく変わること、の3点を押さえておくと、いざというときの対応がスムーズになります。

ご意見やご質問などがございましたら、当方の業務内容やプロフィールに一度目を通されて、どうぞ、電話やメールで、お気軽にお寄せください。(⇒ お問い合わせ

また、私は輸出入通関手続の全般に関して、実務上の問題点の洗い出しや課題の解決に向けたアドバイスが可能です。詳細は、こちらをご覧ください。(⇒ 貿易・通関・保税に絡む問題を解決したい GTConsultant.net

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